EVも多様化、水素エンジン車も

 ただし、そう単純でもないようだ。「3割減というのは最悪のシナリオ」(尾崎氏)ともいう。

 変動要素の一つは、EVにおける変速機搭載の動きだ。独アウディのEV「eトロン」シリーズや独ポルシェのEV「タイカン」は、EVでありながら変速機を搭載している。最高速度を引き上げたり、駆動力をきめ細かくコントロールしたりする狙いだ。今は一部の高級EVに限った動きだが、この考え方が広がれば、変速機向け軸受けの減少幅は小さくなる。

 水素エンジン車など、エンジンを搭載する自動車が残る可能性もある。トヨタ自動車は5月、水素を燃焼させるエンジンで24時間耐久レースに参加し、1634kmを走った。これで「水素エンジン車の普及の可能性が格段に上がった」と尾崎氏はみる。

 「50年にEVが100%になるという仮説は持っておくべきだが、EVといっても多様化していく可能性が高い。カーボンニュートラルを目指すための車がバッテリーEVだけではない可能性も出てきた」(尾崎氏)という状況だ。これがNSKの判断を難しくしている。特定の応用分野が縮小していくだけであればそれに合わせて体制も縮小していけばいい。ところが、EVの進化や水素エンジン車の拡大に備えて、そこで求められる技術も磨いておく必要がある。

 エンジンとモーターの両方を搭載するハイブリッド車(HV)は、通常のガソリンエンジン車より多くの軸受けを搭載する。主要国の当面の規制ではHVも認められており、「今後5年ほどはHVの時代が続く。今よりも需要増の恩恵を受けられる」(尾崎氏)。その恩恵を受けている間に、車の内部構造が大きく変わる時期に向けた正しい布石を打てるか。「3割減」をスタートラインとしつつ、どこまで上振れを狙えるかの重要な時期になる。

 21年4月に社長・CEO(最高経営責任者)に就任した市井明俊氏に、ポストガソリン車の開発戦略を聞いてみよう。