2050年のカーボンニュートラルに向け、ガソリンエンジン車からの転換が急激に進む自動車業界。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのモーター駆動に変わると自動車の内部構造が一変する。自動車部品を提供するメーカーはこの波にどう対応していくのか。回転軸を支える部品である軸受け(ベアリング)の大手、日本精工(NSK)の戦略を探る。

自動車の駆動部に組み込まれる日本精工の軸受け
自動車の駆動部に組み込まれる日本精工の軸受け

 「今のままガソリンエンジン車がEVに置き換われば、自動車向け軸受けは数量ベースで3割減になる」

 こう明かすのは、NSKの自動車事業本部で駆動系の軸受けを担当する尾崎美千生執行役だ。軸受け販売が減る最大の理由は、変速機(トランスミッション)を搭載する自動車が減ること。多数の歯車や軸で構成する変速機は、エンジンの出力を適切なギアで車輪に伝えるための装置であり、そこに使われる軸受けの数は一般に1台当たり30~50個程度とされる。

 自動車1台には100~150個程度の軸受けが使われている。その3割程度を占める変速機は、摩擦の少なさや高速回転への対応など、軸受けメーカーとして付加価値を訴求できる用途の一つだ。

 その変速機が、ほとんどのEVで不要になるという。エンジンはある程度回転数を上げなければトルク(回転させる力)を大きくできないため、発進時や坂道などでは低速用のギア、速度が上がるにつれて高速用のギアを使うのが一般的だった。ところがEVを駆動するモーターは原理上、動かし始めたときから最大のトルクを発生させられる。つまり、多数のギアを持つ変速機を介さなくても、モーターの回転数の制御だけで効率よく加速ができるわけだ。その結果、回転軸を支える軸受けの需要が減少する。

 欧州連合(EU)の欧州委員会は7月、ガソリンエンジン車の新車販売を35年に禁止する方針を打ち出した。独フォルクスワーゲンはそれに先駆けて、35年までにガソリンエンジン車の販売を打ち切る方針を示していた。

 NSKの21年3月期通期の連結売上高は7476億円。そのうち、変速機やエンジンなどに使われる軸受けを含む「自動車軸受」セグメントは2335億円だった。

 単純計算すれば、車両のほとんどがEVに変わったころにNSKの売上高から数百億円規模が「消滅」する可能性がある。設備投資や研究開発、人員配置などの大幅な見直しも含めて事業計画を検討する必要が出てくる。

続きを読む 2/4 EVも多様化、水素エンジン車も

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