トヨタ自動車系販売店で車検や個人情報の取り扱いに関する不正の発覚が相次いでいる。コロナ禍の逆風下でも業績は好調なトヨタだが、足元の販売現場では競争の激化で疲弊が進む。顧客からの販売店網への不信が致命傷になりかねない「CASE」時代。対策は急務だ。

 トヨタ自動車の豊田章男社長は9月9日、日本自動車工業会(自工会)の会長会見で2度陳謝した。1つは、東京オリンピック・パラリンピックの選手村でトヨタ製自動運転車両が視覚障害を持つ選手と接触した事故について。もう1つが、トヨタ系の販売店で相次ぐ不正車検についてだ。

トヨタ自動車の豊田章男社長は自工会会長会見で陳謝した(写真:オンライン会見の映像をキャプチャー)
トヨタ自動車の豊田章男社長は自工会会長会見で陳謝した(写真:オンライン会見の映像をキャプチャー)

 選手村での事故は、発展途上の自動運転技術に対して、複合的な交通状況が重なって発生したもの。先進技術の死角と改善点を浮き彫りにした。メーカーとしての責任は避けられないが、長期的な視点で見ると、自動運転が進化し社会に受容される過程で得た大きな教訓ともいえる。

 根深いのは販売店での不正だ。発端は3月、トヨタ系販売大手のATグループ傘下の販売会社、ネッツトヨタ愛知(名古屋市)が2018年以降の5000台を超える不正車検で行政処分を受けたことだ。7月にはトヨタの全額出資子会社、トヨタモビリティ東京(東京・港)でも指定整備の一部の検査の未実施や数値の改ざんが明らかになった。自工会会長会見翌日の9月10日にも、ネッツトヨタ山梨(甲府市)が不正車検を公表した。車検の顧客獲得のための「より安く、より短時間で」という競争の激化が遠因となった。

 それだけではない。9月15日にトヨタは27の販売会社で、5797人の顧客の個人情報を同意なしでデータベースに登録していたと公表。去る8月19日にも9つの販売会社における3318人分の同様の不正が報告されている。トヨタはサービス強化の接点として販売店に顧客情報の登録を奨励していた。

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