モリタホールディングス(HD)が「消防車のモリタ」から「総合防災ソリューション企業」への転身を急いでいる。消防車両事業の利益率は約12%を超えるなど安定した収益を稼ぎ出すが、防災事業などを含めた事業全体の利益率では10%を割り込む。なぜ総合防災へ転換するのか。同社の尾形和美社長に理由を聞いた。 (関連記事:火を制すもの「CASE」も制すか、働くクルマが示す未来

モリタホールディングスは消防だけでなく総合的な防災ソリューションを提供する企業への転換を図る
モリタホールディングスは消防だけでなく総合的な防災ソリューションを提供する企業への転換を図る

消防車メーカーとして国内シェア59%とトップですが、2025年度までの中期経営計画ではグローバルで「総合防災ソリューション企業」になる目標を掲げています。

尾形和美社長(以下、尾形氏):当社は消防車のイメージが強いかもしれません。(消防庁によると)出火件数は減っていますが、近年は非常に印象に残る火災が多いですよね。例えば、糸魚川市の大火やアスクルの倉庫火災、首里城の火災。火災の中身が変わり、今まで経験したことがない火災も増えてきた。また、台風や大雨による土砂崩れ、増水による水害など昨今の災害が非常に突発的に発生し、どんなことが起こるか分からないという時代へ様変わりしました。

<span class="fontBold">尾形 和美(おがた・かずみ)氏</span><br />愛知県出身。1982年森田ポンプ(現モリタホールディングス)入社。2005年、モリタポンプ事業本部事業統括部長。13年、モリタ取締役事業統括部長。15年から現職。
尾形 和美(おがた・かずみ)氏
愛知県出身。1982年森田ポンプ(現モリタホールディングス)入社。2005年、モリタポンプ事業本部事業統括部長。13年、モリタ取締役事業統括部長。15年から現職。

 そうした中でモリタは、火を消し、赤い車だけを提供していればいいのか。1つの災害が甚大なものになる中、消防車を使って火を消すことに加えて、排水作業や災害後に発生したがれき・ゴミの処理など、救助する側と救助される側の双方に対してもう一段踏み込まなければならないと感じていました。そこで「グローバルな総合防災ソリューション」を企業のビジョンとして掲げたのです。排水ポンプ車、移動式のトイレカーや、自動車の電源を利用した電気供給車などを提供することも始めました。

21年3月期の売上高は2%減と自動車関連の企業のなかで実績は悪くありませんでした。

尾形氏:消防車事業では9割が官公庁からの受注です。20年度の予算は19年には組んでいます。2年前の今頃、何を買いましょうと考えています。官公庁はコロナで急に注文をキャンセルするわけではなく、予算を組んだ事業は執行されます。

 20年は国も地方自治体もコロナ対策に予算を使い果たしてしまいました。来年はない袖は振れないよという状態からスタートしています。そうすると、真っ先にもうちょっと我慢しようと言われるのが消防車です。20年度の決算は影響を受けていないように見えますが、それは違います。

新車販売は22~23年ごろには戻るのではないかと言われていますが、消防車の販売はなかなか戻らないのでしょうか。

尾形氏:消防車の世界は乗用車のトレンドから1~2年遅れです。25~26年に戻ってきてくれたらいいなという腹づもりでやっていかないといけません。

25年度までの中期経営計画で、モリタHD全体で営業利益率の目標を約12%としています。消防車事業だけなら達成できますが、他の事業を含めると高い目標です。

尾形氏:この計画を立てたとき(19年度)、新型コロナウイルスの流行は全く予測していませんでした。コロナ禍は非常に大きな課題です。 

 当社について言えば、21年度以降は地方、国のいずれもお金がない。新型コロナ関係への対策でお金を費やし、予備費的なものも全くなく、消防車などは買い控えが出てくるのかなと思っています。

 そもそも消防車を買う顧客が減る可能性は極めて高い。モリタグループの会社のコア事業は圧倒的に強い。しかし、圧倒的に強い消防車には、残念ながらこれから伸びる要素があまりありません。

 もともと少子高齢化で国内の人口が減ってきています。しかも消防の広域化といった取り組みを国が指導していますから、消防車(の総需要)はいずれ減っていくと予想はついていました。だからこそ、消防以外の新たな安全安心を提供できる新事業も開拓していますし、海外に力を入れていくことによって、何とか伸ばそうという取り組みを既に進めています。

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