名古屋市がスタートアップの育成に力を入れている。市周辺にトヨタ自動車やその系列企業が本社を置くなど、自動車産業の街として知られる名古屋。それゆえに大手志向が強く、スタートアップが育ちづらいという悩みも抱えていた。大手企業もスタートアップも栄える街に変貌できるか。挑戦が始まった。

 名古屋駅から徒歩10分。駅前にそびえるビル群を抜けて北東へ歩いていくと、起業家やスタートアップの育成を目指した施設「なごのキャンパス」が見えてくる。

 2017年に廃校となった旧那古野小学校をリノベーションして19年に生まれ変わった建物だけに、中庭には芝生で雑談できるスペースがあるなど、オフィスというよりも学校に遊びに来た、そんな感覚に近い。職員室を改装したというコーヒーやジュースなどが飲めるカウンタースペースには人が代わる代わる出入りし、イベント前には一気ににぎやかになるという。(コロナ禍が続く現在は多くのイベントがオンラインに移行している)

廃校となった小学校をリノベーションした「なごのキャンパス」。出入り口(上)や中庭(下)には小学校時代の面影が残る
廃校となった小学校をリノベーションした「なごのキャンパス」。出入り口(上)や中庭(下)には小学校時代の面影が残る

 なごのキャンパスの運営にはトヨタ自動車系列の東和不動産、パソナJOB HUB(東京・千代田)や名古屋商工会議所などが関わる。「ひらく」「まぜる」「うまれる」をコンセプトに、次の100年に続く産業を生み出し、育てることを目指す。

 名古屋市経済局と連携してスタートアップ向け支援事業の説明会も開くほか、20年に米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)の姉妹組織であるベンチャーカフェと名古屋市が連携したことで、スタートアップのピッチイベントなどの運営も始まった。

 なごのキャンパスの企画運営プロデューサーで、企業の新規事業立案などを手掛けるLEO(名古屋市)の粟生万琴CEO(最高経営責任者)は「大手企業の優秀な人材とスタートアップがうまく交ざり合い、人同士がつながる場を作るのが狙いの一つ」と立ち上げの理由を説明する(関連記事:連続起業家のLEO代表・粟生氏、「1日10分の内省が将来を決める」)。

 なごのキャンパスで開くイベントを手伝うのは社会人だけではない。イベントの運営を手伝っていた19歳の男子大学生は「いつか起業したいと思っていたが、何をすればいいか分からなかった。なごのキャンパスは様々な職種の社会人と関われるのが魅力」と話す。

会社員や学生がスタートアップのイベントの裏方を支えている
会社員や学生がスタートアップのイベントの裏方を支えている

 コワーキングスペースにシェアオフィス、カフェスペース(コロナ禍で一部の飲料の提供は停止中)などを備えているなごのキャンパス。スタートアップに助言をするメンター役には名古屋大学の天野浩教授や松尾清一総長、名古屋テレビ放送や豊田通商などが名を連ねる。地域が一体となってサポートしている格好だ。トヨタ関連の社員がオンラインイベントの配信を手弁当で支えるなど、企業、スタートアップ、学生、行政が気軽に情報交換する場としての役割も担っている。

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