走行時に二酸化炭素(CO2)を出さず、地球温暖化を抑える移動手段として注目を浴びる電気自動車(EV)。だが、早稲田大学大学院の藤本隆宏ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授は、車の走行によって生じるCO2の削減策としてEVのみを是とし、それ以外を否定する論調に疑問を呈する。製造業、ものづくりを長年研究する藤本教授に根拠を聞いた(文中のEVは『バッテリーEV車』を指す)。

藤本隆宏(ふじもと・たかひろ)氏
藤本隆宏(ふじもと・たかひろ)氏
早稲田大学大学院ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授。1979年東京大学経済学部卒。89年ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了。90年東京大学助教授。98年教授。2003~21年、東大ものづくり経営研究センター長。21年4月から現職。専門は技術経営。

EVだけでは温暖化防止は無理

地球温暖化問題に対する自動車産業の在り方について「電気自動車(EV)のみでは解決策にならない」と指摘しています。どのような考えでしょうか。

藤本隆宏・早稲田大学大学院ビジネス・ファイナンス研究センター研究院教授(以下、藤本氏):EVの普及が、CO2の削減という目的に対してどの程度貢献できるのかについて、単純化した仮定を置いて試算してみました。

 日本政府がパリ協定を踏まえて作成した2030年の自動車を含む運輸部門のCO2発生目標は年間1億6300万トンで、20年に公表された同部門の発生値(年2億1000万トン)から約2割少ない水準です。21年時点で国内には約6200万台の乗用車が存在し、運輸部門の年間CO2排出量のうち1億トン弱を占めています。

 それを前提に「現状から30年までに乗用車で2割以上の排出削減(年2000万トン以上)」という目標に対して、EV、ハイブリッド車(HV)、内燃機関車がどの程度貢献するかを予測しました。

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