「最も優れた燃料技術を最大限使うのが、二酸化炭素(CO2)を排出する輸送事業を手掛ける企業としての義務だ」。重油の代わりに液化天然ガス(LNG)を主燃料とする自動車運搬船の建造を国内造船会社2社に発注したと6月15日に発表した日本郵船。会見に臨んだ長澤仁志社長は脱炭素に向けた強い意志をにじませた。

 発注したのは12隻。船体の構造も見直すことで、CO2排出量を従来比で約40%減らせる見込み。既に投入を決めている8隻と合わせ、LNG燃料の自動車運搬船を2028年度までに20隻体制とする。合計2000億円弱の投資となる。「連続建造を約束することで造船業界と海運業界の事業基盤維持と国際競争力の向上につなげたい」と長澤社長は意気込む。

日本郵船初のLNG燃料自動車運搬船「SAKURA LEADER」

 同業の商船三井も6月18日、7000億円を投じてLNG燃料船を2030年までに90隻投入する計画を明らかにした。90隻の中には自動車運搬船も含むという。2社はLNG船を増やすだけではない。燃料にアンモニアや水素などを使う次世代船も早ければ20年代のうちに導入する方針を示した。

 燃料の転換は巨額の投資を伴うため、海運の脱炭素化は思うように進まなかった。世界に約700隻ある自動車運搬船のうち、重油船より割高なLNG船はわずか数隻にとどまっている。ここに来て海運大手が相次いで脱炭素投資を表明した背景には、自動車メーカーを中心に物流のCO2排出量削減への要求が強まっていることがある。

日本の火力発電比率は75%、国内生産が不利に

 自動車業界が特に危機感を募らせるのは、欧州連合(EU)などで導入に向けた議論が進む「ライフサイクルアセスメント(LCA)規制」だ。自動車を中心に、原料の採掘、部品や完成品の生産、使用、廃棄・再利用に至るまでの製品のライフサイクル全体で生じるCO2排出量を評価し、規制するというものだ。インドでも議論されている。

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