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中国・武漢の自動車工場は段階的に操業を再開している(写真:アフロ)

 「2月の時点では中国が危ないというだけだった。今や欧米が全滅。最悪の状態だ」──。

 自動車業界に新型コロナウイルスの波が直撃している。4月1日に日銀が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、景況感を示す業況判断指数(DI)で自動車はマイナス17。リーマン・ショック後の09年3月に記録したマイナス92と比べるとましな印象はあるが、その後も状況は悪化する一方だ。

 スバルは6日、群馬製作所の稼働を9日から一時停止すると発表した。部品調達の影響により、既に決めていた停止予定日から2日前倒しする。トヨタ自動車は3日から国内5工場7ラインの稼働を一定期間停止。日産自動車も、国内3工場で生産一時停止を計画するなど、乗用車8社全てが国内の生産ライン停止を発表している。

 流行が始まった中国や、急速に感染が増加した欧米など、ロックダウン(都市封鎖)の対応がとられる地域から先行して生産停止の措置が進められてきたが、ここにきて国内工場への影響が大きくなってきている。

 従業員の安全確保、サプライチェーンの不安定化に加え、生産停止の最大の理由が世界的な新車需要の低迷だ。外出禁止令も広がっている米国では自動車販売店の営業こそ認められているが、日本車メーカー5社が発表した3月の米新車販売台数は、前年同月比43%減の約27万台に落ち込んだ。

 中国の3月の新車販売台数はトヨタが前年同月比15.9%減の10万1800台、ホンダが50.8%減の6万441台。大規模な外出規制の影響を受けた2月に比べると改善したものの、本格的な回復には至っていない。

 ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「米国の新車販売台数はリーマン・ショックのときですら年間1000万台を超え、基礎的な需要の存在を実証した。一方、今回は感染抑制のために消費行動が抑え込まれ、需要も壊されかねない。瞬間的には年500万台レベルになるかもしれない」との見方を示す。

 自動車の業界団体が1日に発表した日本国内の新車販売台数は、軽自動車を含め、前年同月比9.3%減の58万1438台。需要の落ち込みは現時点では他国ほどではないが、各社には海外の主戦場での急落が重くのしかかる。 

 サプライヤーも自動車メーカーからの減産要請は避けられない。ただ、それ以上に問題となるのは、生産回復までの期間をいかにつないでいくかの資金繰りだという。「生産計画のめどが立たないことが致命的。リードタイムが長いため、いま思考停止してしまうと下期に新車生産を立ち上げても間に合わない」(部品大手幹部)。

 先が読めない中、生産回復に備え従業員も常に待機しておかなければならない。キャッシュアウトは止められず、帳簿以上に積み上がる固定費が各社を圧迫する。サプライチェーンに組み込まれた企業の資金がショートすると、車が造れなくなる恐れもあり「こんなときは一蓮托生(いちれんたくしょう)でやるしかない」(同幹部)。

 中西氏は「強い規制をかけた中国のやり方でも回復のめどを示すまで3カ月かかった。他国ではそれ以上の時間がかかる。日本では少なくとも7月以降になるのでは」と推定する。需要がきつく抑え込まれていた分、事態が収まれば反動で上向きに転じる可能性もある。ただ、今のところ感染収束のめどと景気悪化の二番底は全く見えないままだ。