後ろから緊急車両、どうする?

 運転中、システム任せの限界が垣間見えた場面もあった。例えば、後ろからサイレンを鳴らしながら緊急車両が走ってきたケースだ。この場合、左右どちらかに車を寄せて道を空けなければならないが、システムは道の真ん中を走り続けた。システム側からドライバーに操作を戻す要求もなかったため、ハンドルを握って運転操作を取り戻し、自ら車道の脇に寄せる必要があった。

 ほかにも、細かいカーブが連続する場所や合流地点など、システムが苦手とする条件などでもドライバーに運転が戻されることが度々あった。「ピピッ、ピピッ」という警告音が鳴り、ハンドルの表示灯がオレンジ色に点滅。ナビの映像が消え、メーターの内のディスプレイに「運転操作してください」というメッセージが表示される。試乗中は素直に運転に復帰したため体験できなかったが、要求に応じなかった場合には警告音が強まり、シートベルトを引く体感警報も作動する。それでもドライバーが応じなければ、左車線へ車線変更し、緊急停止する機能が備わっているという。

 このように、思いのほか頻繁に運転操作に戻る必要があるため、スマホを操作するといったことは望ましくないように感じられた。ホンダも、安全性の観点からスマホの使用は推奨していないという。

 ハンズオフ機能や渋滞運転機能で手放し運転をすること自体は、慣れてしまえばとても楽だ。ディスプレーや表示灯が「水色」の場合は手を離してもよい、その他の色はハンドルを握る。一度機能を理解すれば、色分けによるサインは明瞭で判断しやすいと感じた。

 本田技術研究所の杉本氏は「レベル3の進化と、レベル2の普及が今後のステップ」と話す。「高速道路での渋滞時」など自動運転機能を使える条件はまだ限定的だ。様々な場面でレベル3の機能が使えるようにしていくことを目指す。また、レジェンドは100台の限定生産、価格は税込みで1100万円と一般普及向けのモデルではない。「レベル3の知見や開発環境をレベル2以下に早急に取り込み、運転支援機能の進化を全てのラインアップに展開していきたい」(杉本氏)という。

 自動運転開発はレベルの議論と結びつきがちだが、米国を中心に開発が進む「自動運転タクシー」とホンダの方向性はやや異なる。米ウェイモなどは限られたエリア内で自動運転によるモビリティーサービスを目指す。超高精細な地図情報などを駆使し、ロボットタクシーによる無人配車を実現しようという世界だ。一方、レジェンドのような乗用車が目指すのは、自動運転を普及させることによる交通事故ゼロ社会という別路線だ。そのためには「本当に大丈夫か?」という市場の懸念が普及の大きな壁となる。

 自動運転自体はスムーズで、ペーパードライバーの筆者が運転するよりもよほど安全に思われた。ただ、重要なのは周りのドライバーがシステムの運転をどのように感じたかだ。

 左側の合流車線から、車線変更して前に割り込もうとする車が現れた場面があった。自然に減速して前方車両との距離をとり、スペースを空けて「配慮」するなど対応はスムーズだった。ただ、前方車両との間隔に余裕を持ちすぎたため、2台、3台と次々に車が割り込んだ。システムの対応は「優等生」だが、後続車はその動きに違和感を覚えたかもしれない。

自動運転機能を搭載した自動車の車体後部には「AUTOMATED DRIVE」のステッカーを貼ることが要請されているが、自動運転で走行していると気づいたドライバーはどれだけいただろうか。0.1秒の反応の差が事故につながりかねない。流れや空気を読んだ、道路上の「あうんのコミュニケーション」に違和感なく入っていけるかどうかが今後のカギになりそうだ。

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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

 米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。

 3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。

 4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。

 各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。

■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江

■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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