ロシアによるウクライナ侵攻で、多くの自動車メーカーはロシア事業の一時凍結に追い込まれた。経済制裁に起因する物流の混乱などが背景にある。事態が長引くと、市場シェアが大きい仏ルノーや韓国・現代自動車グループに逆風となる。ロシアが主要生産国である金属材料の供給寸断や価格高騰などで、メーカーや地域を越えて悪影響が広がる恐れもある。

 「すでにロシアへの車両の輸出を停止していますが、サンクトペテルブルク工場の稼働も近日中に停止する予定です」。日産自動車は3月7日、こう発表した。「エクストレイル」や「キャシュカイ」など人気の多目的スポーツ車(SUV)を中心に販売してきたが、事業継続は難しくなった。

 その4日前にはトヨタ自動車が現地生産と対ロ輸出の停止を発表。ロシアに派遣していた駐在員には、すでに帰国指示を出した。

 日系自動車メーカーでは三菱自動車とマツダもロシアに生産拠点を持つ。首都モスクワ南西のカルーガ州に欧州ステランティスとの合弁工場を構える三菱自は「部品の供給制約があるため、今後、(現地工場は)停止する可能性が高い」(同社)という。マツダも同様の状況だ。

 ホンダ、スズキ、SUBARU(スバル)は日本や周辺の生産国からの対ロ輸出を止める。かつて資源高に沸いたロシアの自動車市場は年300万台規模に膨らんだ時期もある。だが2015年以降は160万~170万台で回復は停滞。今回の侵攻と経済制裁で先行きは一気に不透明になった。

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