日野自動車が不正な手法でトラックやバスの性能データを測り、国の認証を得ていたことが明らかになった。2016年に三菱自動車でデータ改ざんが発覚した際、社内を調べたが不正を突き止められず、今になって分かったと説明する。いかにグリーンな開発・生産ができるかどうかが自動車メーカーの行方を大きく左右する今、自ら加えたマイナス材料によって想像以上の痛手を負うことになりかねない。

「環境意識という以前に、法令順守ができていなかった。重く受け止めている」
日野自動車の小木曽聡社長は3月4日、中型トラック「日野レンジャー」などに搭載する国内工場向けエンジン3機種について、不正な手法で性能データを取得し、国土交通省の型式認証を得ていたと発表した。
東京株式市場では9日、日野の株式の終値が637円となり、3日終値の1050円から39%下落した。
自ら傷つけたブランド
自動車産業において環境配慮の取り組みは極めて重い課題になっている。規制に適応できているように見せかけた今回の不正は、日野ブランドを自ら大きく傷つけた。
中型エンジンでは、排ガス性能の耐久試験データを規制値に収めるため、排ガスを浄化するマフラーを途中で新品に交換していた。大型トラック「日野プロフィア」などに使う大型エンジン2機種では、燃費を実際よりよく見えるように数値を改ざんした。会見では、具体的な数値を明かしていない。
不正が発覚したエンジンは出荷を停止する。販売数は年間約2万2000台で国内出荷の4割近くを占める。該当するエンジンの搭載車は中大型トラックとバスを合わせ5車種あり、これらは当然出荷できない。また4万3000台のトラックで、リコール(回収・無償修理)などの措置が必要となる。

国内のトラック・バスの生産は日野のほか、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの計4社が握る。日野の国内販売台数は19年3月期に初めて7万台を超えた。
日野のトラック・バスの国内販売台数シェアは3割強。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「戦後からトップを守り抜き、顧客とのつながりが強い」としつつ、「生産停止などで厳しい状況に置かれ、今後は立場が盤石とは言いがたい」と話す。
不正発覚のきっかけは、18年11月に北米向け車両のエンジンの排ガス認証が米国の法規に対応できていないと発覚したことにある。日本向けエンジンに調査対象を拡大し、排ガス規制を強化した16年の「ポスト・ポスト新長期規制」の対象エンジンを中心に確認したところ、不正が判明した。
21年4月から再試験を始め、同年11月に問題があることを認識。22年2月になって具体的な不正の内容が分かったという。問題を認識した後の動きについて、データの調査や耐久試験が必要なため時間を要したと説明する。
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