ゲームチェンジを狙う米テスラや米中IT(情報技術)大手などに対し、既存の自動車大手もソフトウエア主導の開発への転換を急ぐ。車づくりはどのように変容し、巨大なバリューチェーンの勢力図はどう動くのか。連載第3回では、車の基盤ソフト(車載OS)の開発を急ぐ世界の自動車業界のツートップ、トヨタ自動車と独フォルクスワーゲン(VW)などの動きから未来の車を展望する。

■掲載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)風雲児テスラ、ソフトを主役に 「進化する車」で自動車業界揺さぶる
(2)ソニー・ホンダEV連合の衝撃 脱・車の発想でテスラ、アップルに対抗
(3)トヨタ、VWが開発急ぐ車載OS ソフトを制する者が「未来の車」制す
(4)トヨタ、VW、グーグルが勢力競う 車載ソフトで技術争奪
(5)ファーウェイ、エピック…… 未来カーに異業種が群がる
(6)巨大ソフト開発に人材難の壁 日産はインドの巨人とタッグ
(7)『iPhoneの頭脳の16倍』も 車載半導体、高性能化で火花
(8)シンガポール丸ごとデジタル化 未来の車が社会課題解決担う

 「『ソフトウエア・ファースト』で、トヨタの車づくりを次のフェーズに持っていく」。NTTと約2000億円の相互出資を決めた2020年3月の共同会見で、トヨタ自動車の豊田章男社長はこう宣言した。NTTのソフトの技術を取り込んだ上で、海外スタートアップを矢継ぎ早に買収するなど、この2年、トヨタはソフト開発力の強化に血道を上げてきた。

トヨタは「ソフトウエア・ファースト」を掲げ、研究開発子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスを立ち上げた(写真:AP/アフロ)
トヨタは「ソフトウエア・ファースト」を掲げ、研究開発子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスを立ち上げた(写真:AP/アフロ)

 豊田氏が「100年に1度の大変革」と位置づけるCASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)。ソフトの価値を高め、収益化できるかどうかに、CASE時代の生き残りがかかっている。従来の製造業から「脱皮」しなければ──。その焦燥感に背中を押されてきた。

 そんなトヨタが今、社運をかけて開発に取り組むのが、自動車の基盤ソフト(車載OS)となる「Arene(アリーン)OS」だ。

ソフト開発のギア上げる

 「多くの米グーグル出身者が在籍する」(業界関係者)とされるトヨタ傘下の研究開発会社ウーブン・プラネット・ホールディングス(東京・中央)を中心に、25年ごろの実用化を目指す。21年8月にはグループ全体でソフト技術者を6割以上増やし、1万8000人体制にすると発表した。

車載OSの開発を進めるウーブン・プラネット・ホールディングス。トヨタはグループのソフト開発力を強化している
車載OSの開発を進めるウーブン・プラネット・ホールディングス。トヨタはグループのソフト開発力を強化している

 車の価値を決める基幹技術とそれを支える人材は社内に囲い込むことを経営の鉄則にしてきたトヨタ。ソフトが車の生命線になるとの確信を深め、開発のギアを一段上げた。

 なぜ、車に「OS(基本ソフト)」が必要になるのか。従来型の携帯電話と、スマートフォンを例にとると分かりやすい。

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