自動車業界に変革の嵐が吹き付ける中、日本勢でただ1社、気を吐くトヨタ自動車。地道に磨いてきた自動車の製造能力もトップクラスだが、「CASE」を中心とした次世代に向けた秘密兵器も温めている。それが2015年前後から本格的に稼働させた、クラウド管理による遠隔情報サービス。常時100万台以上の車をネットワークでつなぎ、地図の精緻化や車両点検といったソフトサービスの提供を可能にしている。

名古屋市中心部にある高層ビルの1フロア。ここに、トヨタのコネクテッドサービスの司令塔「コネクティッドセンター」がある。整理された200以上の座席には訓練を積んだオペレーターが座り、全国のトヨタ車オーナーの車内から届く問い合わせに答えている。
「今から軽井沢に行くんだけど、お薦めのランチはありますか」。そんな都内にいるオーナーに対し、オペレーターは検索して店舗の候補を挙げ、予約までを代行する。ここまでならクレジットカードのコンシェルジュサービスのようだが、コネクティッドセンターでは自動車の位置情報も捉えている。遠隔でナビを設定し、到着までの所要時間も正確に計算する。

オペレーターが調べるために保留できるのは90秒まで。それを超えるとデスク上の画面が赤く光る。問い合わせ件数は1日最大8000件ほどで、2020年は230万件となる見込みだ。災害時にも対応できるよう、埼玉県と山形県、沖縄県にもデスクを設けている。
現在、国内にあるトヨタのコネクテッド車は約100万台。センターではこれらの車の「健康状態」も常に把握している。部品に異常の兆候が見られると、車のダッシュボードに警告を出し、必要ならオペレーターが口頭で助言する。事故などの緊急時には、車内と連絡を取って救急車を呼ぶなどの対応をする。
情報は一方通行ではない。車両の遠隔管理により、センターには日々、膨大なデータが入ってくる。車載カメラの映像やタイヤのセンサー情報などだ。これらのデータを蓄積し、分析することで、凍結など道路の状況がわかったり、将来の混み具合を予測して道案内したりすることも可能になる。
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