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 100年に1度の大変革期といわれる「CASE」時代を好機と捉えているのが、日本の素材・化学各社だ。EV(電気自動車)の航続距離を伸ばすには、強度を保ち軽量化できる革新的な素材が欠かせない。そこで強みを発揮するのが、日本が世界シェアの約80%を握るともいわれる炭素繊維だ。

帝人が炭素繊維を使って制作した車体部品

 ドイツ西部に位置するヴッパータール。独バイエルの創業の地として知られる工業都市で、帝人は2020年2月に自動車部品専用のデザイン・設計拠点「テイジン・オートモーティブ・センター・ヨーロッパ(TACE)」を設けた。この拠点を軸に欧州の自動車メーカーとの関係を深めるのが狙いだ。

 欧州メーカーは金属と炭素繊維などを組み合わせた複合材の活用で日米メーカーよりも先行しており、取引実績がない部品メーカーからも積極的に調達する傾向がある。「部品の提案から破壊検査まで一貫してできるTACEの設置は、欧州メーカーと関係を構築する上で武器になる」と炭素繊維などの複合成形材料事業を統括する中石昭夫事業部⻑は期待を寄せる。

 帝人は従来、自動車部品に組み込まれる炭素繊維のシート状の材料を提供する、いわば「ティア3(3次下請け)」や「ティア4(4次下請け)」メーカーだった。「材料だけを提供していても陳腐化してしまう。これからは自動車産業でティア1を目指していく」(中石事業部長)。

 これまで鉄やアルミといった金属部品が多く使われてきた自動車。ただ今後、EV(電気自動車)など電動車の航続距離を伸ばすには、強度を保ちながら軽量化できる革新的な素材が欠かせない。完成車メーカーが全方位で研究開発を進めるのが難しくなっているだけに、部品や素材などのサプライヤーには完成車メーカーへの提案力が求められている。そこで強みを発揮できると期待されるのが、日本勢が世界シェアの約80%を握る炭素繊維だ。

 帝人も08年、炭素繊維と金属を組み合わせた複合材料の開発拠点を設置し、完成車メーカーのニーズを先回りしてくみ取る販売・企画部門を強化してきた。中でも起爆剤と位置づけるのが17年に約900億円で買収した、自動車部品向け複合材を手がける米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)だ。