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フィジカルインターネットのセミナーは参加募集定員がすぐに埋まるなど、物流に対する関心の高さを感じさせた(写真:安部まゆみ、以下同)

 物流に革命を起こすというフィジカルインターネットとは何か、デジタル化に出遅れた日本の物流を効率化するのか──。このほどヤマトホールディングスが運営するヤマトグループ総合研究所(木川眞理事長)が都内でフィジカルインターネットをテーマにしたセミナーを開催した。当日は約200人が参加。当初、参加者を募集したところ、定員がすぐに埋まるなど、物流問題に対する関心の高さをうかがわせた。

 セミナーでは、経済産業省の物流担当者が、2020年度に大手コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどを巻き込んだ実験を行うプロジェクトを発表したほか、長年、物流を研究する東京理科大学経営学部教授の荒木勉氏が「フィジカルインターネットは究極のオープンな共同配送であり、日本の物流を大きく変える可能性がある」と語った。

物流クライシスの状況は変えられるか

 日本では現在、荷物を載せて運ぶトラックの「積載率」が5割を切る一方、ドライバーの高齢化が進み、物流現場の人手不足が深刻になっている。

 インターネットの普及で、ネット通販が広がり個人向けの小口の荷物が増加する中、荷物を届けても受け取り手が不在で、再配達が必要となる荷物の割合は16%に達するといわれ、現場の負荷が深刻になっている。物流クライシス呼ばれる状況も生まれ、物流各社や荷主は、効率化に向けた対策打ち出している。

 実は、トラックの積載率低下などの問題は、日本だけでなく海外でも起きており、多くの国で、長距離輸送に伴う長時間労働や環境への影響など物流の在り方そのものが問われている。

 そんな中、生まれたのがフィジカルインターネットだ。物流にインターネットの発想を取り入れた概念で、米国のジョージア工科大学のブノア・モントルイユ教授やフランスのパリ国立高等鉱山大学のエリック・バロー教授らの研究者が提唱する。インターネットにおいては、情報がネットワーク上の最適なルートで届くように、荷物を物流ネットワーク上の最適なルートで届ければ効率化が図れるというわけだ。

 実現のためには、企業の枠を超えた物流資産のシェアリングがカギになる。それぞれの物流会社が、トラックや倉庫などを抱えて自社のネットワークだけでモノを運ぶと、当然、空きスペースなどのムダが生まれる。そこで発想を根本から転換し、企業の枠を超えてトラックや倉庫などを利用し合えば、互いの荷物で空いたスペースを埋めることができ、効率化につながるというわけだ。

 さらにこの考えを進めていけば、積載効率を上げるための荷物サイズの規格化やIT(情報技術)を使った最適なルート選択、自動運転技術の採用など、様々な物流の可能性が広がっていく。

 ヤマトグループ総合研究所はこの理論に着目。フィジカルインターネットが物流クライシスの状況を打開する突破口となるのではとの観点から、2019年、ジョージア工科大と共同研究を視野に協力体制を築くなど、動き始めた。