巨大な2台の建機に頭を挟まれた力ない従業員──。労働災害の中でも思わず目を覆う凄惨な現場だった。2019年3月、東京都内にある土木工事会社の敷地内。60代のシニア社員が1台の建機をトラックの荷台に積み込む作業の途中、その悲劇は起きた。
トラックの荷台と地面の間に2枚の道板をかけ渡し、この社員が建機を自ら運転してトラックへ乗せようとしていたところ、片側の道板がずれて落下した。足場を失った建機は社員を乗せたまま横転。建機が横転した先にあったのが巨大なトラッククレーンで、建機の運転席にいた社員は不運にも、自ら運転していた建機とクレーンの間に頭部を挟まれることになった。
ベテランゆえの油断か、集中力の低下か
建設作業に詳しい者に言わせれば、大きな疑問が2つあるという。1つは道板がずれたこと、もう1つは運搬作業スペースのすぐ横に、クレーンが置かれていたことだ。
一般的に、建機を運搬車両に積み込む際は、作業手順を事前に確認し、道板の位置を含め万全の注意を払う。さらに万一の時のために周辺状況の整備や確認も欠かさない。道板が外れることも、横転先にクレーンがあることも普通ならあり得ないことだという。
ましてや被害に遭った社員はこの道、30年以上の大ベテラン。運搬作業は何百回、何千回と繰り返しきたはずだ。
ベテランであるがゆえの油断なのか、それとも高齢化による集中力低下が招いたミスなのか。いずれにせよ、「人生100年時代」が到来しようとしているこの先の日本では、こうした事故が珍しくなくなっていくかもしれない。

企業広告から街中のビジネスマンの会話まで、ここ数年ですっかり市民権を獲得した感のある「人生100年」という言葉。流行の発端となったのは、16年に出版されたベストセラー『ライフシフト──100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット著)だ。
医学の進歩によって、07年に米国やカナダ、イタリア、フランスで生まれた子供の50%は104歳まで生きる見通しで、今40歳の人も95歳までは生きる確率が50%ある。人生70~80年というのは過去の話となり、人々は人生設計を根本から見直す必要がある──。そんな主張がこの本の骨子だ。








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