インバウンドが課題を覆う

 そもそもコロナ以前から業界はいくつもの課題を抱えていた。既存の旅行会社はオンライン化に乗り遅れ、競争力がそがれていた。宿泊業界も新陳代謝の遅れが指摘されていた。特に旅館業界は「コロナ以前から稼働率は平均4割程度で、長年にわたって供給過剰だった」(東京女子大学の矢ケ崎紀子教授)と評されている。団体旅行の衰退とともに経営が悪化した事業者が多く、観光庁が5月に実施した調査によると、生産性が低く赤字傾向のため債務返済のめどが立っていない旅館は全体の約3割を占めている。

 それでも近年はインバウンド客の増加で業界は活気を取り戻し、09年施行の中小企業金融円滑化法によって、経営困難な事業者でも資金繰りが改善しやすくなった。新型コロナで受けた大きな打撃は、好調な外部環境を背景に業界が長年の課題を先送りにしてきた反作用とも言える。

 「観光業は地方の雇用の受け皿で、新陳代謝に伴う雇用の喪失に注意が必要」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの高津斌徳チーフコンサルタント)という視点は欠かせないだろう。それでもコロナ禍で実施されるさまざまな公的支援が長引けば、後年の国民負担は増える。今後は事業が継続できるようにするだけでなく、ビジネスの仕組みを変えるよう促すことが求められる。廃業支援を視野に入れた施策も必要になるかもしれない。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「「おもてなし」の先へ サービス業は変われるか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。