東京都心の小規模ホテルは廃業を検討

 移動が制限されれば、宿泊業界も影響を受ける。京王プラザホテルは、2月の稼働率が41.9%と、前年同期比で約34ポイント低下した。同ホテルはここ数年、宿泊客に占めるインバウンド(外国人訪日客)の割合が75~77%と高く、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている。会員制ホテル大手のリゾートトラストは、20年3月期の連結売上高を114億円下方修正した。新型コロナウイルスの影響でインバウンドだけでなく、国内旅行者も減少し、業績に響いたという。

 資金力や立地、設備などの面で劣る、個人経営のホテルはさらに厳しい状況に置かれている。

 「もう閉店したいくらいだよ」

 JR山手線のある駅から徒歩数分の場所で、15室程度の小規模ホテルを経営する70歳代の男性はあきらめたような表情でこう語った。

 このオーナーによると、日本での感染が拡大した2月末頃から、一気に宿泊客が減ったという。電話があっても、予約ではなく、全てキャンセルの連絡だ。宿泊客がゼロの日が続き、3月末までの予約で残っているのは、1件だけだという。

 同ホテルは、立地の良さから、会社員が出張の際に利用するなど、ビジネス客の需要を取り込んできた。近くに飲食店が密集しているため、終電に間に合わなかった飲み会帰りの客が、タクシー代より安いからという理由で泊まることもあった。リーマン・ショックや、東日本大震災でも宿泊客は減ったが、今回はそれ以上だという。

 「公的な融資を受けることも考えたが、うちみたいなホテルがお金を借りても、あまり意味がない」とこのオーナーは話す。大手ホテルチェーンが資金を投じて新しい設備で出店攻勢をかける中、昔ながらのホテルは競争力を失いつつある。同ホテルの通常の稼働率も50~60%程度で、全国のビジネスホテルの平均稼働率が約75%であることを考えると、決して高くはない。これまでもオーナーと従業員1人で運営していたため、コスト削減の余地も限られる。今回の新型コロナの流行で需要が戻らなければ、ホテルを続けるのも難しくなる。オーナーの男性は、これを機に廃業も検討している。

 新型コロナウイルスは、日本の観光業界に転換を迫っている。ここ数年の急激な成長は、インバウンドという追い風があってこそだ。だが、その追い風がなくなった今、本質的な価値を提供できなければ、この先の事業の継続は困難になるだろう。

この記事はシリーズ「「おもてなし」の先へ サービス業は変われるか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。