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(写真:UPI/アフロ)

 新型コロナウイルスが世界的に広がる中、深刻な影響をこうむっているのが観光業界だ。ホテル関係者は「GWまでに需要は回復しないと思う。夏の書き入れどきまでになんとか落ち着いてくれれば」と話す。旅行会社の関係者も「中東呼吸器症候群(MERS)の時は、(流行していた)韓国の代わりに台湾旅行をプロモーションできた。でも今回は世界中に感染が広がっていて、どこにも誘導できない」と漏らす。各国は感染拡大を抑え込むために様々な対策を講じているが、観光関連の企業の中には、影響の長期化を見据える動きが出てきている。

 業界でいち早く長期化の見通しを示したのがエイチ・アイ・エスだ。同社は3月2日、2020年10月期の連結売上高の見通しを1250億円下方修正した。重症急性呼吸器症候群(SARS)やMERSが流行したときと同様、新型コロナウイルスも終息まで半年程度かかり、7月まで影響が及ぶと仮定して算出した。

 旅行事業の20年10月期の売上高は期首予想より1260億円引き下げた。もともと同期の売上高は7940億円と、前の期比9.9%増という高い目標を掲げていた。19年に100%子会社化したカナダの旅行会社レッドラベル・バケーションズの買収効果や、羽田空港の発着枠拡大による旅行者増などを見込んでの数字だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で目算が狂った。2月の売上高は前年同月比で10%減少した上、3月の受注は40%減、4月分は50~60%減と減少幅は拡大している。

 同社は中国や韓国、イタリアなどに加えて、3月13日にはシェンゲン協定加盟地域へのツアーを中止した。エイチ・アイ・エスが旅行商品を取り扱っている国・地域の半数以上が、ツアー中止の対象になっているという。下方修正発表時より、ツアー中止の地域は拡大しており、通期の業績はさらに悪化する可能性がある。

 「変なホテル」を含むホテル事業も厳しく、当初の見通しより15億円下方修正した。「通常単価は1万円台後半から2万円程度だが、一時6000円前後で売っていたホテルもある」(同社広報担当者)。

 ハウステンボスの売上高については、50億円下方修正した。ハウステンボスはここ数年、入場者数が伸び悩んでおり、19年11月~20年1月の入場者数は前年比2.8%減だったこともあり見通しを修正した。しかし、新型コロナウイルスの影響はまだ盛り込んでいないという。ハウステンボスは2月29日から3月15日まで休園しており、現在も営業しているのは園内の一部に限られる。休園の影響を盛り込めば、さらに悪化する可能性がある。

 他の大手旅行会社はまだ業績見通しについて発表していないものの、影響は甚大であることが予想される。

 JTBは英国やロシアを含む欧州全域のツアーを4月23日出発分まで中止した。トルコを含む中東やアフリカ全域、オーストラリア、ニュージーランドなどのツアーも中止している。

日本旅行も欧州32カ国・地域を含むツアーを4月28日分まで中止した。ロシアやオーストラリア、ニュージーランドなどを含むツアーも中止している。近畿日本ツーリストでは、欧州のほか、エジプトやモロッコを含むツアーを4月26日まで中止している。

 旅行業界はこれまで、SARSやMERS、米同時多発テロやイラク戦争など、感染症や国際情勢で大きな打撃を受けてきたが、プロモーションをする地域を変えるなどして対応することもできた。今回は対象地域が世界中に広がっており、八方塞がりの状況だ。