坂巻氏:旅行会社の支店は、その地域に一番近いところにありますが、まだまだ魅力を発掘しきれていません。例えば、札幌支店の使命は札幌の人をいかに外に出すかであって、札幌へ人を呼び込むことには重きを置いていないのです。ディズニーランド35周年なら、日本全国からディズニーランドに旅行者を送ります。そうではなくて、自分たちの住んでいるところ、働いている地域にどういう良さがあるか考える必要があります。

 私は、従来型の旅行会社は狩猟民族だと言っています。おいしい餌があるところにみんなで移動して食べに行く。おいしい餌がなくなったら、「はい、次」という感じです。でもこれからの旅行会社は農耕民族になる必要がある。地域の方々と一緒になって、その地域をつくっていく。以前からやってはいましたが、今後はより重要になります。

すべての地域に観光資源があるわけではありません。

坂巻氏:旅行でなくてもいいと思います。

 徳島県の上勝町をご存じですか。地元のおばあちゃんたちが葉っぱを栽培して、京都の料亭などに販売する「葉っぱビジネス」で有名です。おばあちゃんたちは朝早くからタブレットで注文を受けるのですが、寝る間も惜しくて楽しくて仕方ないというんです。「昔は病院でみんなと会うのが日課だったけど、今は病院に行っている暇がない」って。

 楽しいとどんどん自分で考えるようになります。温室をつくって、本来の季節よりも早めに出荷することで高く売ったり、視察ビジネスを始めたり。そういう風に地域が変わっていくんです。1000万円プレーヤーのおばあちゃんも生まれています。

 旅行会社は、どこに欲しい人がいるのか、欲しい人が何を求めているのか、そうしたことを探し出すのは得意です。地域の資源と、それを欲しい人を結んでいけます。

お客様が知らない旅行のワクワクする話を

とはいえ、すべての旅行会社がそうした方向にかじを切れるわけではないと思います。オンラインで旅行者自身が自分で予約をできる時代になり、リアル店舗型の旅行会社は存在意義を問われています。淘汰も進んでいくのではないですか。

坂巻氏:先ほども申し上げましたが、どう区別化していくかの方が重要です。中小の旅行会社もあってしかるべきですし、逆にそういうところがとがった商品をつくって、ファンを増やすこともできます。

 私の知っている若い女性は、旅行会社に勤務しているのに言葉遣いはサービス業っぽくない。お客様と対等の言葉遣いです。でもお客様はその女性のファンになります。なぜなら、お客様が知らない旅行のワクワクする話を教えてくれるからなんです。その女性は1回の旅行をご案内するために、3~4回その地域を訪れているそうです。

 OTA(オンライン旅行会社)のように、素早く簡単に予約できるような、そういった業界もあっていいと思います。OTAも我々も、それぞれの役割をしっかり認識した上で、全体のパイを大きくしていくことが重要です。

この記事はシリーズ「「おもてなし」の先へ サービス業は変われるか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。