国の旅行需要喚起策「GoToトラベルキャンペーン」の一時停止が長引いている。JTBは6500人規模の人員削減に踏み切り、近畿日本ツーリストは138ある国内の個人旅行店舗を3分の1に縮小するなど、リストラが進む。業界を襲った未曽有の危機から約1年。大手旅行会社を中心とした業界団体である日本旅行業協会の坂巻伸昭会長に、足元の状況と今後の戦略について聞いた。

日本旅行業協会(JATA)の坂巻伸昭会長。東武トップツアーズの社長を務める
日本旅行業協会(JATA)の坂巻伸昭会長。東武トップツアーズの社長を務める

年末からGoToトラベル事業が停止しています。旅行業界としては、再開してほしいのが本音ではないでしょうか。

坂巻伸昭・日本旅行業会会長(以下、坂巻氏):旅行業というと、1つの業界の話に聞こえるかもしれませんが、非常に裾野の広い産業です。宿泊や移動だけではなく、現地でご飯を食べたりお土産を買ったりするのも旅行。そういう意味では、今回のコロナ禍では、旅行会社だけでなく、地域の方々も相当疲弊しています。どういう形なら人を動かせるか。安全安心を前提として、新しい旅行の形を考えてきました。

 今は旅行が止まっていますが、(再開したときに)どのような感染対策ができるかは関係省庁と話し合っているところです。例えば行動履歴。インバウンドやアウトバンドが進んでいく中では、人の行動履歴はものすごく重要になってきます。アプリを使うなど、どんな形で何ができるかを考えています。

安く旅行ができる印象付けはいけない

コロナ禍では観光業界と政治の近さが度々指摘されています。

坂巻氏:これまで旅行業はほとんど政治との付き合いはありませんでした。もし政治との距離が近くなったように見えるとすれば、それは国が「観光立国」を打ち出したからだと思います。

 日本政府は2003年に観光立国を宣言しました。観光立国を達成するためには、業界として国の動きを把握して、それに沿った行動をしていくことが必要になります。政府の指針の下、ともにやっていくのが今の私たちの役割です。

2月にGo Toトラベルの支援策が拡充され、キャンセル1件につき最大4000円が追加で補償されることになりました。他の業界に比べて支援が手厚すぎるようにも見えます。

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