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 SNS(交流サイト)で、三菱商事が2019年秋に始めた物流倉庫ビジネスが、スタートアップのsoucoのモデルを「パクった(盗用した)」のではないかと取り沙汰された。大企業とスタートアップが協業する際には、どういった点に配慮すればいいのか。大企業の新規事業の創出や社内起業家の育成を手掛けるアクセラレーターである、ゼロワンブースター(東京・千代田)の鈴木規文CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。
(関連記事:「倉庫ビジネスを巡る三菱商事の『パクリ疑惑』はなぜ生じたか」)

鈴木 規文(すずき・のりふみ)氏
1999年カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。2006年にアフタースクール事業「キッズベースキャンプ」を創業し、08年に事業を東急グループに売却してPMI(合併・買収後の統合プロセス)業務に従事。12年3月にゼロワンブースターを設立し、主に大企業向けの新規事業の創出支援や起業支援を行っている。ゼロワンブースターは、三菱地所が20年2月に東京・千代田で開業したイノベーション拠点「有楽町『SAAI(サイ)』Wonder Working Community」を運営している。

今回の三菱商事とsoucoのすれ違いを見て、どのように感じますか。

鈴木規文ゼロワンブースターCEO(以下、鈴木氏):soucoの中原(久根人)社長と面識はないのですが、中原社長がSNSに投稿した「似てるなw」という投稿を見ると、三菱商事を責められる立場にないと感じているのではないでしょうか。

 数回の面談で、「パクった、パクらない」の話をする必要は無いかなと。協業の準備中で、エクイティ(資本)を入れるためのデューデリジェンス(資産査定)用の資料を提出しているなら、話は別かと思いますが。だからこそ、中原社長も「w」をつけたのだと思います。

当事者より、周囲が大きく反応している印象です。

鈴木氏:スタートアップ側のエモーショナル(感情的)な反応が、三菱商事のレピュテーション(評判)を下げてしまった。実質的な損失は、三菱商事のほうが大きいのではないでしょうか。

 世の中に出される新しい価値はほぼ模倣であり、既存の様々なもののかけ算です。そうである以上、(パクった、パクられたは)「言いっこなし」というところがあります。それはスタートアップ側も承知しています。

確かに、言いっこなしというのは感覚的に分かります。そうでなければ、インターネットのフリーマーケットサービスがこれだけ乱立するはずがないですね。

鈴木氏:おっしゃるとおりで、そこを厳格にしすぎると、世の中からイノベーションが生まれなくなる。市場で戦っている以上、(ユーザーが受け入れやすい)ある一定の方向に収れんしていくのは当然なんですよ。類似性を持ってしまうのはしょうがない。それゆえにスタートアップの世界では、早く行動した者が勝つという考え方です。なので、スタートアップサイドが感情的になるとしたら、「お行儀」の問題かなと思います。