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 ファッションビル運営の丸井グループは2月12日、新興ブランドを支援する新会社D2Cアンドカンパニーを設立したと発表した。「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」とは広告代理店や小売店などを介さずに、ネットを通じて消費者に商品を直接販売するビジネスモデルのことで、ブランドの背景や理念に共感して商品を購入するミレニアル世代に強いとされる。丸井グループは、「D2Cブランドを育て、集める店」としての地位を確立して、次世代の消費を取り込む考えだ。

 「単なる(大企業が新興企業に投資する)コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ではなく、D2Cの発展に貢献するエコシステムを目指す」

 丸井グループの青井浩社長は12日に開いた記者会見でこう強調した。新会社は、ファッションやコスメ、雑貨などでD2Cの新ブランド立ち上げを目指す企業に、出資だけでなく、運転資金の融資や丸井グループが運営する店舗への出店、リアル店舗の運営受託を通じて、経営を支援する。

新会社、D2Cアンドカンパニーの設立を発表した丸井グループの青井浩社長(右から3人目)

 丸井グループが期待するD2Cブランドの魅力は、コアなファン層だ。既存のアパレルはマス広告や、賃料が高い一等地への出店でブランド認知度を高め、大量に生産した商品を販売するモデルだった。しかし、商業施設の床面積が増えるにつれて、「どこの百貨店もショッピングセンターも、同じアパレルブランドが並んでいる」(関係者)状態となり、魅力を失った。百貨店ブランドの代表格であるオンワードホールディングスは2019年に大規模な閉店を発表した。

 それに対してD2Cのモデルは、リアル店舗を持たずに、インターネット通販(EC)サイトからブランドを構築していく。ネットでの反応を意識して、自社が提案するデザインがどれほど売れるかを見極め、ときに消費者から聞いた意見を取り入れて商品を生産する。

 マス広告でなくインスタグラムなどのSNS(交流サイト)で、ブランドを立ち上げた背景や世界観を訴えることで、ファンになってくれる顧客を開拓し、深掘りする。店舗賃料や広告費を削り、「自分たちの作りたいものに共感してもらえる人に売る」ため、小規模なブランドも多い。

 丸井がD2Cに前のめりなのは、ライバルである百貨店やショッピングセンター、駅ビルと「同じゲームをしていたら必ず負ける」(青井社長)からだ。丸井グループの店舗の大きさは、都心では百貨店の旗艦店の半分以下で、郊外に行けばイオンなどの大型ショッピングセンターに劣る。駅近くの好立地に店舗を構えても、鉄道会社などが運営する駅直結の施設にはかなわず、立地や規模で中途半端という弱点を抱えている。

 店舗の「中身」で勝負しようとしても、弱体化が進む既存アパレルに頼るだけでは、他の商業施設と変わらない「金太郎あめ」な店にしかならない。それなら、たとえ社歴が短くともD2Cというビジネスモデルで熱烈な固定ファンを持つ新興ブランドを育て、自社店舗に出てもらおうというわけだ。