「2019年12月 忌日法要獲得率56% 6位/109寺院中」
東京都府中市にある善照寺の岸本深信住職は、「僧侶が評価されることなんて今までなかったから、新鮮でしょう」と言いながらスマートフォンの画面を見せてくれた。忌日法要とは四十九日や一周忌など、お葬式の後に執り行う儀式のこと。獲得率は、分母が葬儀でお勤めをした回数で、分子が四十九日の法要の依頼が舞い込んだ回数。葬儀を頼んだ喪主が、再び同じお寺や僧侶に依頼するかを示す「リピート率」を割り出している。
「109寺院中6位」は、30キロ圏内のお寺を直近1年の実績で比べた順位だ。さらに画面をスクロールすると、50点満点の「お客様満足度」が出てくる。評価項目は、「清潔な身なり」「親身な対応」「丁寧な話し方」「読経」「説法・法話の内容」の5つで、各項目は10点満点だ。接客業の基本のような項目から、僧侶らしい専門的な要素まで、喪主から集めたアンケート結果がアプリに反映されている。

このアプリ「てらさぽ」を提供するのが、インターネットで葬儀を受注しているベンチャー、ユニクエスト(大阪市)だ。アプリはユーザー(喪主)用ではなく、同社から仕事を受注する僧侶が閲覧するためのもの。ユニクエストは、リピート率が高い僧侶に、優先的に仕事を発注するようにしている。
「僧侶への冒涜(ぼうとく)」との反発が起きそうなこのアプリ。開始前にユニクエスト社内でも心配の声が上がり、開始後には実際に「俺らをなんやと思っているんや、おまえらが評価しているのか」といった僧侶からの反発が同社に寄せられた。
てらさぽを使っているお寺は約780、僧侶の人数は約850人だ。ユニクエストから定期的に受注する僧侶のうち、「7~8割」(ユニクエスト広報)が利用しているという。残りはスマホを使いこなせない高齢の僧侶らだと同社はみている。
デジタル化が仏教界をも飲み込んでしまったのだろうか。事情を聞くと、ユニクエスト側、僧侶側の双方に、相応の合理的な理由が見えてきた。
ユニクエスト側の事情は、「競争」と「定額」だ。「小さなお葬式」と銘打って、ユニクエストがネットで葬儀の受注を始めたのは2009年。宗教離れが進み、身近なお寺が存在しない現代人の受け皿になろうと、「不透明な葬儀価格を徹底的に見直し、無駄を省いた低価格セットプラン」(同社ホームページ)を提示した。
葬儀の全国平均は約130万円(経済産業省の特定サービス産業動態統計調査から計算、18年度)。小さなお葬式は、通夜と告別式なしで最低限の仏具と火葬のみで15万9000円(税別)、5~30人程度が参列する通夜と告別式で44万9000円(同)と、価格を抑えた定額プランとした(僧侶の手配費用と自治体に払う火葬代は含まない)。
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