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 スシローとくら寿司。激しい争いを続ける回転ずし業界の大手2社が一斉に都心への出店に力を注ぎ始めた。コロナ下でもファミリー客の需要をつかみ、店内飲食が主体にもかかわらず、業績は堅調に推移している。ロードサイド店は飽和感もある。都心の店舗網を加えることで、ファミレスや居酒屋の客層をも取り込もうとしている。

両社とも都心に出店する好機を迎えたと判断している

 12月初旬、JR秋葉原駅前にあるスシローの都心型店「秋葉原駅前店」を訪れた。業界でアイドルタイムと呼ばれ、客が少ないはずの午後4時ごろだが、案内機を見ると20分待ち。待合スペースに10人以上が座っている。周辺に居酒屋チェーンやファミレスもあるが午後4時に満席になることは少ないだろう。

 回転ずし業界はコロナ発生後も好調だ。最大手のスシローグローバルホールディングス(GHD)は売上高に当たる売上収益が2020年9月期に前の期比2.9%増え、過去最高となった。くら寿司は人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボもあり9月の既存店売上高が前年同月比7.9%増、10月が26.1%増、11月が33.8%増と大幅に伸びている。

 好調な2社がそろって首都圏や関西圏をはじめとする大都市の中心部に出店の狙いを定めた。回転ずしは4~5割前後とされる原価率の高さから土地の賃料が安い郊外のロードサイドへの出店が主流だ。かねて都心への出店機会をうかがっていたものの、コストに加え上層階で集客力が下がるリスクが足かせとなっていた。

 ところがコロナ禍で多くの外食が苦境に陥り都心店の閉鎖が続出。跡地に回転ずしの出店余地が生まれている。スシローGHDの水留浩一社長は「こんな(コロナ禍の)状況だからこそ良い物件が手の届く水準で出る」と話す。

「一皿100円」ではない

 スシローは16年に都心への出店を始めた。ロードサイド店と異なり、1皿の最低価格が100円(税抜き)でなく120円。国内568店(12月14日時点)のうち都市型店は1都2府4県で23店舗と4%にすぎないが、20年9月期は新規出店33店舗のうち13店舗が都市型店だった。

 くら寿司も国内472店舗のうち東京、大阪、福岡の駅前立地は11店舗。ほとんどが郊外型だったが今後は都心を強化する。21年10月期は新規出店25~30のうち渋谷駅前店、西新宿店など最低6店舗を1皿110円の都心店にする。

 セルフ受け付けや自動会計により、客が従業員と接しないシステムが完成したことも、くら寿司の都心進出を後押しした。田中信副社長は「価格は120円からにしたかったが、顧客満足度を考慮して110円とした。オフィスワーカーの需要を掘り起こしたい」と語る。

 日本フードサービス協会によると20年10月のパブレストラン・居酒屋の売上高は前年同月比で36.3%減。回復の糸口はつかめないままだ。コロナ禍でも需要が減退しない回転ずしや焼き肉といった業態は好機を迎えている。

 回転ずしは近年、麺類やスイーツといったサイドメニューを充実させている。このため「都心に出ればファミレスや居酒屋の需要も取り込める」(大手回転ずしチェーン幹部)とみている。くら寿司は都心店のメニュー構成で「アルコール商品の拡充」を掲げている。

 苦戦を強いられる居酒屋やファミレスを尻目に攻勢を強める回転ずし。アフターコロナの需要回復までを見越した先手争いが始まった。