あえてマニュアルを作らない「チェーンらしくない店舗」で成長してきた塚田農場は、店舗拡大期に質が追いつかずに行き詰まってしまう。コロナ禍を機に、スマートフォンで注文・決済ができるモバイルオーダーを導入して省人化と接客向上の二兎(にと)を追う。「旬」を過ぎた塚田農場は復活できるのか。異色の調査会社による徹底分析が鍵を握る。


 日経ビジネスはコロナ禍で苦しみ、今も苦境にあえぐ外食産業が向き合うべき構造課題を解きほぐした書籍「外食を救うのは誰か」を発行しました。書籍から内容を厳選してお届けする本連載。今回は塚田農場の復活に向けた奮闘の後編です。

 書籍発行に連動し、日経ビジネスLIVEでは12月15日(木)19:00~20:00にウェビナー「『安売りが外食苦境の根源だ』ファミレスをつくった男が激白」を開催します。1970年にファミリーレストラン「すかいらーく」1号店を開業した横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』主幹の神山泉氏が、外食産業の課題と展望について語ります。参加を希望される方は「12/15開催 すかいらーく創業者の横川氏が語る『外食苦境の根源』」から詳細をご確認ください。

塚田農場が導入したモバイルオーダーでは、これまでスタッフがアピールしてきた店の魅力を詰め込もうと工夫した(写真:陶山 勉)
塚田農場が導入したモバイルオーダーでは、これまでスタッフがアピールしてきた店の魅力を詰め込もうと工夫した(写真:陶山 勉)

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 コロナ禍を機に、モバイルオーダーの導入に踏み切った塚田農場。ただ、注文取りやレジ打ち業務を来店客のスマホに委ねるだけでは、店舗側の省人化は進んでも来店客の体験が向上しない恐れがある。

 モバイルオーダーの導入で来店客の動きがどう変化するのか。その効果検証に重要な役割を果たしたのが、調査会社のトリノ・ガーデン(東京・港)だ。2010年に創業した社員20人ほどの会社だが、ドトールコーヒーや松屋フーズなど外食業のほか、スギ薬局なども店舗の分析に活用する。塚田農場はビールメーカーの紹介で19年にトリノ・ガーデンを知った。

『外食を救うのは誰か』(鷲尾龍一著、日経BP)
『外食を救うのは誰か』(鷲尾龍一著、日経BP)

 トリノ・ガーデンは依頼を受けた企業の店舗にカメラを設置し、その映像から来店客や店員の動きを数値化する。店内に入ってから席に案内するまでの時間、注文してから料理が届くまでの時間、スタッフを呼ぶしぐさや回数などを数える。スタッフの視線や体の向き、中腰などつらい姿勢の時間、料理の盛り付けなどもチェックする。いずれもカメラの映像を目視しながら実測したり判定したりする。店舗内に流れるBGMと会話の音量など環境情報も計測する。

 こうして可視化したデータを基に、人間工学や認知心理学などの理論を用いて分析し、オペレーション(店舗運営)の改善案を考える。そして店舗で実践し、また検証して、というサイクルを繰り返す。

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