全国展開の店舗網と豊富なメニューで拡大してきた「総合外食」業態が新型コロナで劣勢に立たされている。特定のジャンルの料理を求める「目的来店」客をつかまないと生き残れない。業態変更の動きが一斉に始まった。先行する専門店と、業態を見直した大手による新規参入組の争いが激しくなる。

豊富なメニューと全国展開により、外食需要をつかんできた
豊富なメニューと全国展開により、外食需要をつかんできた

 「これからの外食は食べたいものが明確な『目的来店』を意識する必要がある」。11月12日、すかいらーくホールディングス(HD)のオンライン決算会見で、谷真会長兼社長はこう話した。

 ファミレスや居酒屋チェーンのトップは異口同音だ。「目的来店を促進するためにも高付加価値のセットメニューをアピールする」(ロイヤルホールディングスの黒須康宏社長)「焼き肉など特定の料理を食べるという目的来店は強い」(ワタミの渡邉美樹会長)

 ファミレスや居酒屋はいまだにコロナの影響が強い。ワタミの2020年4~9月期の連結最終損益は71億円の赤字。ロイヤルHDも20年12月期に280億円の最終赤字を見込み、12月に全社員の1割弱に当たる200人の希望退職を募る。すかいらーくHDは21年末までに不採算店を中心に200店舗を閉める。

 対照的に好調なのがファストフードと回転ずし、焼き肉など特定ジャンルの料理を提供する業態だ。マクドナルドの20年の既存店売上高は3月と6月を除いて前年を上回った。客単価が上がり、客数減を補っている。モスバーガーもまとめ買いをするファミリー層の持ち帰り需要をつかんでいる。

 回転ずしチェーン最大手、スシローグローバルホールディングスの20年9月期の売上収益は過去最高の2049億円で前の期比2.9%増えた。「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーションは焼き肉部門の既存店売上高が6月以降、8月を除いて前年実績を超えている。回転ずしや焼き肉は来店客の食べるものがあらかじめ決まっている。「家では作るのが面倒」という消費者に訴求しやすい。

「なぜ行くのか」を考え始めた

 コロナによる外出自粛でデリバリーサービス、テークアウトが広がった。多くの消費者が「なぜ外食店に行くのか」を意識するようになり、「なんでも屋」「総合外食」と言えるファミレスや居酒屋は劣勢に立たされている。「『総合外食』でも看板メニューがあれば客は来る。苦戦している業態はそうしたメニューの磨き上げが弱い」といちよし経済研究所の鮫島誠一郎氏は指摘する。

 苦境に陥った大手は専門性の高いブランドへの業態転換を急いでいる。すかいらーくHDはファミレス「ジョナサン」約70店舗の見直しを進め、多くをカフェチェーン「むさしの森珈琲」やハワイアンダイニング「ラ・オハナ」などに変更する。「夢庵」や「藍屋」では、これまで取り扱っていなかったすし商品を導入した。

 ワタミは22年3月までに「ワタミ」ブランドの居酒屋約330店のうち120店程度を焼き肉業態「焼肉の和民」に切り替える。渡邉会長は「レッドオーシャンだが、市場の広がりが期待できる」と話す。

 こうした専門性のある業態には強力な先行者がいる。「焼き肉業態は既存チェーンのブランドが強い。簡単には割り込めない」(大手焼き肉チェーン幹部)。「牛角」との客の奪い合いも始まるだろう。

 大手外食が業態によりすみ分けることもあった時代から、正面からぶつかるしかない時代へ。味と接客、価格といったすべての面で実力を示さないと生き残れない。

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