シダックス創業家の意向を受け、オイシックス・ラ・大地が実施中のシダックスへのTOB(株式公開買い付け)。2019年に出資したユニゾン・キャピタル(東京・千代田)が保有する株式約27%を買い取る狙いだが、創業家などを除くシダックス取締役会が反対を表明して「敵対的TOB」に発展した。なぜ創業家の動きに待ったをかけたのか。柴山慎一取締役専務執行役員に反対の理由を聞いた。

柴山慎一氏[しばやま・しんいち]
柴山慎一氏[しばやま・しんいち]
シダックス取締役専務執行役員。80年日本電気(NEC)入社。90年野村総合研究所に入社し、シダックスのコンサルティングを手掛けた時期も。2017年から社会情報大学院大学(現社会構想大学院大学)教授(現在に至る)。19年シダックス取締役、20年専務執行役員。現在はグループの経営戦略や広報、品質管理などを担当している。(写真=陶山勉、以下同)
事態の概要

 不振のカラオケ事業から撤退するなど経営危機に陥っていたシダックスは2019年、投資ファンドのユニゾンから出資を受けた。シダックス創業家はあらかじめ、ユニゾンから株式を買い取る「株主間契約」を締結。株式約27%の買い取り額は、22年6月末までならユニゾンが出資した額の2倍に当たる80億円、7月以降なら100億円が、少なくとも必要な契約だった。

 22年、創業家は契約の実行を決意。株式買い取りには巨額の資金が必要なため、オイシックスに買い取りの「指定譲受人」となるように求めた。オイシックスはシダックスの給食事業と、自社の食品宅配事業にシナジーがあるとして応じた。

 ユニゾンは買い取り手法を、市場外の相対取引ではなく、TOBにするように要求した。オイシックスはTOBを始めたが、柴山氏ら創業家などを除くシダックスの取締役3人が反対し、「敵対的TOB」となった。ユニゾンはシダックスの反対やインサイダー取引の懸念などを理由にTOBに応募しないと表明している。

 一方、外食大手のコロワイドもシダックスに給食事業の買収を提案していたことが明らかになり、事態は複雑化した。シダックス取締役(創業家除く)は、オイシックスがTOBを完了して大株主になる前に、コロワイドなど別企業からの提案と、オイシックスを比較することがふさわしいと主張している(コロワイドは9月15日朝、このまま事業買収の提案を行っていると混乱を招くとして、提案取り下げを発表した)。

調整しきれず、力不足だった

シダックスの柴山慎一取締役専務執行役員(以下、柴山氏):9月5日、取締役会でTOBに反対すると決議をして、マスコミをにぎわすことになってしまいました。従業員はとても不安に感じています。2カ月ほど(創業家、ユニゾン、オイシックスの間で)調整してきましたが、最終的に「川を渡らざる」を得なくなってしまった。自分の力不足を感じています。

別会社にいた柴山さんが、シダックスに入社するまでの経緯を教えてください。

柴山氏:2000年前後、今の志太勤一会長兼社長が、創業者(志太勤)から社長をバトンタッチされた時期です。私は前職の野村総合研究所でガバナンスを専門とするコンサルタントとして、業績評価や人事制度など各論も手掛けておりました。そんな中、シダックスの新体制のビジョンや中期経営計画の策定に関するコンサルティングを引き受けていました。期間は4~5年ほどです。

 10年ほどたち、再び社長と出会う機会がありました。私もセカンドキャリアについて考えていた頃で、「仕事を手伝ってくれないか」と声をかけられたのです。当時、社長は後継者育成に課題を感じておられました。退職後にフリーランスとして仕事を引き受けました。

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