外食業界の未来を探る本連載。普通なら避ける「バッドロケーション」をあえて狙うバルニバービに続いて今回取り上げるのは、中華料理チェーン「大阪王将」などを運営するイートアンドホールディングス(HD)。冷凍ギョーザ販売などの「食品事業」を、売上高の6割を占めるまで成長させた。コロナ禍で来店客が減少した外食店が収益源の多様化を狙って食品販売やデリバリーなどに乗り出した例は多いが、それらを事業の柱にまで成長させるのは簡単ではない。イートアンドHDの成功の背景には何があるのか。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)切れた「モルヒネ」 外食に真の危機が訪れる
(2)外食が変われなかった10年 2つの「追い風」で危機感緩む
(3)ロイヤルHD菊地会長「多店舗化の呪縛から抜け出せ」
(4)淡路島に出現した「外食の町」 バルニバービの“非常識”立地戦略
(5)食品販売が売上高の6割に 「大阪王将」を導いた“逆算”(今回)
(6)「連邦経営」掲げるクリエイト、個人店とチェーンの間に活路
(7)人手不足は怖くない 働きがいこそ外食店の力
(8)すかいらーく創業の横川竟氏「外食の安売りは僕の反省でもある」
……ほか

 700億円規模とされる国内の冷凍ギョーザ市場でシェア3分の1を獲得――。中華料理チェーン「大阪王将」を運営するイートアンドHDが食品事業で躍進している。

 冷凍食品を中心とする「食品事業」の売上高は10年間で2倍以上に拡大。19年3月期には、食品事業の売上高が148億円、外食事業が142億円で初めて外食事業を上回った。直近の2022年3~5月期では、食品セグメントが売上高の約60%を占めるまでに成長している。

 「大手食品メーカーによる寡占に近い市場で上位10社の一角に入れた」。こう手応えを語るのは、食品事業の成長の立役者である仲田浩康社長COO(最高執行責任者)だ。

仲田浩康(なかた・ひろやす) イートアンドホールディングス社長COO
仲田浩康(なかた・ひろやす) イートアンドホールディングス社長COO
1964年生まれ。関西学院大学大学院経営戦略研究科修了。ダイエーに入社し、フロア責任者や店長を経験。2000年にイートアンド入社。04年に取締役、12年に専務取締役。20年10月から現職。(写真:的野 弘路)

生協への販売からスタート

 イートアンドが冷凍食品事業に参入したのは1993年(当時の社名は大阪王将食品)。外食事業以外にも会社を支える柱をつくりたいとの思いからだった。

 ただし、社内やフランチャイズ加盟店からは「なぜ食品事業を始めるのか」「自分たちの首を絞めるだけだ」といった反発の声も上がった。ギョーザを販売すれば店舗に来てくれる客が減るという不安は否めない。そこで、販路が限定的な生協への冷凍ギョーザ販売から始めた。

 徐々に事業を拡大しようと試みたが、2000年ごろまで販売は伸び悩み、全社の売上高の1割を占める程度にとどまっていた。食品事業を育てるためにどうしたらいいか。テコ入れを狙って00年に三顧の礼で迎え入れたのが、ダイエーでフロア責任者や店長を務めた経験を持つ仲田氏だった。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1129文字 / 全文2269文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「外食ウォーズ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

外食を救うのは誰か』を刊行!

 コロナ禍で大きな打撃を受けた外食産業。採算性の低さや人手不足は表層的な問題にすぎない。真の問題はコロナ禍前から変わっていなかった。
 日経ビジネス記者がキーパーソンを表から裏から徹底的に取材し、外食産業の構造と課題を解き明かす1冊を刊行しました。約400万人が従事する約25兆円の産業を救うのは誰か──。