新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた外食店。各地で発令された緊急事態宣言も解除され、少しずつ客足が戻ってきた。その一方で、時短営業への「協力金」で延命してきた店の中には、経営が苦しくなるところも出てきている。しかも、これは一過性の問題ではない。根本にある構造問題から目を背けてきたからだ。「外食に未来はあるか」を探る本連載。第2回は、外食の構造問題を解き明かしていこう。
■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)切れた「モルヒネ」 外食に真の危機が訪れる
(2)外食が変われなかった10年 2つの「追い風」で危機感緩む(今回)
(3)ロイヤルHD菊地会長「多店舗化の呪縛から抜け出せ」
(4)「人の流れは自らつくる」 “非常識”立地で攻めるバルニバービ
(5)「連邦経営」掲げるクリエイト、個人店とチェーンの間に活路
(6)食品販売が売上高の6割に イートアンドHD導いた「逆算」
(7)人手不足は怖くない 働きがいこそ外食店の力
(8)すかいらーく創業の横川竟氏「外食の安売りは僕の反省でもある」
……ほか

「日本で外食産業が新しい価値を生み出せたのは1970年ごろから10年間だけだった」(すかいらーく創業者の一人、横川竟氏)
「安価で潤沢な従業員を調達できた20世紀の外食モデルは終わった。産業全体で変革を起こさなければ、外食はもたない」(リクルート・ホットペッパーグルメ外食総研の竹田クニ研究員)
外食業の行く末を危惧する声があちこちから上がっている。
それもそのはず。外食業では不祥事が頻発している。回転ずし「スシロー」を運営するあきんどスシロー(大阪府吹田市)は2022年夏、度々の謝罪に追われた。まず、TVコマーシャルで売り込んだ商品をほとんど提供しないといった「おとり広告」で消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を6月9日に受けた。
7月中旬には「ビール半額」キャンペーンの広告を店内に掲出しながら「未実施」として半額にしなかった店舗があったことが判明。返金対応に追われた。これで消費者の足が遠のいたのか、4~6月は前年同月を上回っていた国内のスシローの全店売上高が7月には前年同月比5.7%減となった。
顧客第一の姿勢見失う
ほかにも、すかいらーくの「ジョナサン」店長による部下への傷害事件、「大阪王将」のフランチャイズ加盟企業が運営する店舗での不衛生問題、「木曽路」での長時間労働問題が浮上するなど、外食業の不祥事は枚挙にいとまがない。消費者の意識が少しずつ「ウィズコロナ」に変わり、外食店に足を運ぶ頻度を増やそうとする矢先に冷や水を浴びせてしまった。
なぜ不祥事が続くのか。「人手が足りない」「利益率が低い」「競争が激しい」「はやり廃りが早い」……。外食店が置かれた難しい経営環境を言い訳にしながら「顧客第一」の姿勢を見失った結果だろう。
外食の経営支援を手掛けるスリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎氏は「コンプライアンス、労働環境、組織管理、損益管理を、精神論で乗り切ろうとする経営者が多い」と指摘する。その原因を突き詰めると、2つの構造的な問題に収れんしていく。
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この記事はシリーズ「外食ウォーズ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
『外食を救うのは誰か』を刊行!

コロナ禍で大きな打撃を受けた外食産業。採算性の低さや人手不足は表層的な問題にすぎない。真の問題はコロナ禍前から変わっていなかった。
日経ビジネス記者がキーパーソンを表から裏から徹底的に取材し、外食産業の構造と課題を解き明かす1冊を刊行しました。約400万人が従事する約25兆円の産業を救うのは誰か──。
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