コロナ禍を受けた外食産業の明暗がくっきりと分かれている。
日本マクドナルドホールディングス(HD)は12日、2020年1~6月期の業績を発表した。売上高は1392億4300万円で前年同期比2.0%増、営業利益は147億6900万円で0.7%増となり、増収増益を達成した。同じハンバーガーチェーンでは、モスバーガーを展開するモスフードサービスが20年4~6月期に3億3700万円の営業赤字となるなど、外食企業の多くがコロナ禍で苦しむ中、マクドナルドの「独り勝ち」が際立っている。
「おかげさまで上期(20年1~6月期)は増収となった。顧客がマックに何を求めているのかを聞き、適正に対応してきた結果だ」。12日にオンラインで開かれた決算説明会の席上、日本マクドナルドHDの下平篤雄副社長はコロナ禍でも増収増益を達成できた要因についてこう胸を張った。
既存店売上高は堅調に推移している。新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれだした2月以降、既存店売上高が前年同月を下回ったのは3月(0.1%減)と6月(3.2%減)の2カ月で、残り4カ月は前年実績を上回った。2月と5月は15%前後売上高を伸ばすという好調ぶりだ。

もちろんコロナ禍の影響は受けている。客数は4月以降、1割から2割の減少で推移している。だが、その一方で、客単価を大幅に上げることに成功した。4月以降の客単価の上昇率は16.4~45.3%に及ぶ。特に、店内での密集を避けられ、従業員との接触も短時間で済むドライブスルーの伸長が著しく、「4月、5月の売上高の半分程度はドライブスルーによるものだった」(下平氏)という。
コロナ禍で在宅勤務が普及したことで、オフィス街立地の需要が減り、直営店の売り上げは前年同期比で7.5%減少したが、ロードサイド立地でドライブスルーの利用ができる店舗の多い加盟店(FC)では売り上げが14%増加。都心店の不振を郊外店が補った格好だ。
マクドナルドは感染拡大が広がるさなかの4月末、スマートフォンから注文、決済を完了すると従業員が店の駐車場まで商品を届けてくれる「パーク&ゴー」を開始するなど、コロナ禍に対応したサービスの充実を図っている。「下期はドライブスルーやモバイルオーダーを強化し、利便性向上、スピード豊かなサービスを提供したい。業績予想の変更はなく、プラン達成を目指し(コロナ禍にも)対応していく」と語る下平氏。通期の営業利益予想は290億円で据え置いた。9年ぶりに過去最高益を更新する見通しで、逆風を跳ね返す勢いだ。
牛丼御三家はいずれも苦戦
一方で「和製ファストフード」の雄である牛丼御三家は苦戦している。20年度第1四半期の決算で、いずれも業績が落ち込んだ。
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