大戸屋の新社長にコロワイド創業家の蔵人賢樹氏が就くことを求める──。定食チェーン大手、大戸屋ホールディングス(HD)に対し、焼き肉店「牛角」や回転ずし「かっぱ寿司」などを傘下に収める筆頭株主、コロワイドが14日、大戸屋HDの経営陣の刷新を目指す株主提案を公表した。コロワイドは株主提案が可決された場合、大戸屋HDの新社長にコロワイド創業家出身の蔵人賢樹・コロワイド専務取締役を充てる方針であることが日経ビジネスの取材で明らかになった。

コロワイドは甘太郎などの居酒屋チェーンに加え、牛角やかっぱ寿司を傘下に持つ
コロワイドは甘太郎などの居酒屋チェーンに加え、牛角やかっぱ寿司を傘下に持つ

 株主提案では取締役候補者12人の選任を求めている。窪田健一社長を含む大戸屋HD側の5人(社内2人、社外3人)の取締役の続投を認めながらも、7人はコロワイド側が指名する形だ。コロワイド側は、創業者・蔵人金男会長の長男である蔵人賢樹氏を窪田氏に代わる大戸屋HDの新社長の候補者とする意向だ。

 非業務執行取締役を含む社外取締役の候補者には、大戸屋の実質的な創業者である故・三森久実氏の長男で、かつて大戸屋HDの常務も務めた三森智仁氏の名前もあるようだ。株主提案が可決された場合は、コロワイドと大戸屋HDの双方の創業家が取締役に名を連ねることになる。

 三森智仁氏は2015年の久実氏の死後、大戸屋HD内での処遇などを巡って、窪田社長ら経営陣と対立、16年に大戸屋HDの取締役を辞任している。久実氏の妻である三森三枝子氏と智仁氏は大戸屋HDの発行済み株式18.67%を昨年、コロワイドへ売却していた。

個人株主の動向がカギ

 14日にコロワイドが公表した株主提案を、大戸屋HDは突っぱねる意向を示している。同日発表した文書で「子会社化について正式かつ具体的な提案を受けていない」「取締役候補者について事前の打診はなかった」などと主張している。

 そのうえで「コロワイドとは複数回の面談を行い、企業価値向上・株主共同の利益に資する提案は真摯に検討する旨を伝えている」と説明した。「(大戸屋HD)経営陣がコロワイドグループへの参画を初期段階から拒絶し、協議を進展させられなかったとする記載は事実に反する」とも訴えている。

 一方、コロワイド側の言い分は異なっている。同社関係者によると、両社は昨年から業務提携やM&Aを見据えた交渉を繰り返してきたが、「(大戸屋HD側は)こちらの提案に面談の当初から明確な拒否の姿勢を示していた」という。「『入り口』の段階で拒否しておきながら『具体的な提案がない』と主張するのもおかしな話だ」といい、双方の言い分はかみ合わない。

 コロワイドの野尻公平社長は「創業家から株を買うときに日本一の定食屋にすると約束した。敵対的になってでも買収するのは約束があるからだ」と周囲に漏らしているという。三森氏を自陣営に引き込むことで、創業家の意向を大義として掲げたい意向が透ける。野尻氏は大戸屋HDを子会社化する考えで、経営陣を刷新する株主提案が通らなければ敵対的TOB(株式公開買い付け)も辞さない構えをみせる。

 大戸屋HDの経営権を巡り、プロキシーファイト(委任状争奪戦)になれば、多くを占める個人株主が勝敗のカギを握る。資本の論理が中心の機関投資家に比べ、個人株主はこうしたストーリーに心を動かされる傾向がある。コロワイド側の初手は先行きの展開を見通して大戸屋HDに攻め込む内容になっている。

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