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 1人焼き肉専門店「焼肉ライク」などを展開するダイニングイノベーション(東京・渋谷)は2019年12月、横浜市青葉区にすし店「寿司 あおい」を開店した。同店はダイニングイノベーション初のすし業態。事業責任者には外食チェーン、RDCグループで回転ずし「がってん寿司」の事業会社社長を務めた丸山晃執行役員が就任し、陣頭指揮を執る。あおいがターゲットとするのは高級ずしでも、回転ずしでもない「すし居酒屋」市場。大手が市場を寡占する回転ずしではなく、次なる市場での主導権を虎視眈々と狙う。丸山氏に新業態に挑戦する狙いなどを聞いた。

ダイニングイノベーションが開業した「寿司 あおい」

前職でも、すしチェーンのトップでした。なぜ転職して新業態を立ち上げようと思われたのですか。

丸山氏:「がってん寿司」の経営を手掛けるようになったのは10年近く前のことです。その頃から誰かに教わるでもなく、自分で仮説を立てて業態を開発するというトライ&エラーを繰り返していました。「回らないすし」という業態自体は、前職でも「江戸前がってん寿司」というブランドを立ち上げて、繁盛させることができました。でも、多店舗展開や維持管理には自分自身、ずっと課題を感じていました。

 ダイニングイノベーション創業者の西山(知義氏)は「西山塾」という若手経営者向けの集まりを主宰しています。私も2018年の夏ごろにそこに参加しました。そこで、同社のノウハウを使えば、今まで構想レベルにとどまっていた事業が実現できるという確信を持ちました。自分自身の成長も考えて、転職したのです。

ダイニングイノベーションの丸山晃執行役員

なぜ今、外食の中でも大手のプレーヤーがしのぎを削っている、すし業態にチャレンジしたのでしょうか。

丸山氏:回転ずしより、職人の手作りである「本物感」を備えつつも、リーズナブルな価格帯の手軽なすし屋をつくりたかった。回転ずしはカジュアル過ぎる一方で、銀座をはじめとする高級なすし屋では敷居が高すぎる。この中間に満たされていないニーズがあるとみました。

出店計画など今後の事業戦略を教えてください。

丸山氏:今後5年で直営20店、FC(フランチャイズチェーン)80店の計100店舗を展開したいと考えています。最終的には全国で300店舗前後出せるようになりたい。ただし、物流の効率などを考えれば首都圏中心に事業を進めることになると思います。

 店舗展開に当たっては、すしを好む50歳以上の人口比率や競合店の数、最寄り駅の乗降客数など私が設定した10前後の条件をクリアした地域に出します。「焼肉ライク」と異なるのは、すしは技術的な要素が強いこと。焼き肉店の業務は単純作業が多いが、すしの場合、「握る」「ネタを切る」といった技術は難易度が高い。ここがFC化する上で障壁になってくると思います。

手作りのすし業態はFC化が難しいということですね。その課題はどう解決するのでしょうか。

丸山氏:簡略化するのも一手ですが、私は「もともと技術のある人たち」にFCをやっていただくことを考えています。大手回転ずしチェーンが地方に進出したことで、街の小さなすし屋は衰退しました。また、地方には複数の回転ずし店を運営している中小企業も点在していますが、こちらもいずれは淘汰される可能性が高い。「技術はあるが大手には太刀打ちできない」と苦戦している中小に、弊社が大手に対抗しうるノウハウを提供して多店舗展開を図るつもりです。

 地方で産直の素材を使ったすしを提供している「グルメ回転ずし」の利益率は5%前後。回転ずしはアルコールやサイドメニューといった利益率の高い商品で勝負しづらく、「薄利多売」の要素が強い。一方であおいならば、酒やつまみのメニューも豊富にそろえており、利益率は13%ほどにできます。ロイヤルティーを支払っても10%前後にはできる。「黙ってつぶれるか、それともシフトチェンジで大手に勝てる武器を得るのか」。こうした選択肢を地方の中小回転ずしチェーンに提示したいと思っています。