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 ファストフードの雄が夕食需要の獲得に本腰を入れ始めた。吉野家とマクドナルドだ。両社は1月末に、それぞれ「定食メニューの強化」と「ごはんバーガーの導入」を発表した。

 日本マクドナルドは2月5日、国産米を原料としたバンズで具材をはさむ「ごはんバーガー」を発売した。5月中旬までの期間限定で、味は「てりやき」「ベーコンレタス」「チキンフィレオ」の3種類。販売するのは午後5時以降と、夕食の需要にターゲットを絞り込んでいる。

マクドナルドは初めて国産米を原料としたバンズで具材をはさむ「ごはんバーガー」を発売した

 主に狙うのは30~40歳代だ。「このくらいの年代になると、夕食の主食は『ごはん派』という人が多くなる。そういった層にも訴求できるようにする狙いがある」。日本マクドナルドホールディングスの広報担当者はこう話す。

 一方、吉野家は1月28日、定食メニューの強化策を打ち出した。ごはんを24時間おかわり自由としたほか、午前11時から翌朝4時まで牛皿にもう一品おかずを追加できる「W定食」(税抜き698円)を導入した。

吉野家は定番の「牛皿」におかず1品を追加する「W定食」で夕食需要を狙う

 定食メニュー強化の狙いはこちらも「夕食時間帯」の顧客獲得だろう。吉野家ホールディングス(HD)の広報担当者は「特に都心部ではランチにお客様が集中している。あくまでイメージだが、ランチタイムの3時間の入店客数とナイトタイムの6時間の客数は同程度だ」と話す。定食メニューの強化を周知するために、吉野家は2月18日まで、定食を全品10%オフとするキャンペーン「夜割」も実施している。

 いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「吉野家は昼は混んでいるが、夜は比較的すいている印象。例えばカレー専門店の壱番屋などはランチとディナーで同程度の客数だ。吉野家はおかわり自由でボリュームアップを訴求しつつ、単価のアップも狙っているのではないか」と話す。

 だが、定食メニューの強化は副作用の危険もはらむ。それは回転率の低下だ。「おかわり」のない丼メニューよりも、定食メニューでは来店客の滞在時間が長くなる可能性が高い。ただ、これについては吉野家も織り込み済みのようで、「その点は痛しかゆしではあるが、夜は比較的、席に余裕のある店舗が多い。『ゆっくり、がっつり食べられる』という利点を訴求したい」と強気だ。

 吉野家HDの業績はここまで好調に推移している。2019年2月期は既存店が振るわず60億円の最終赤字に転落したが、20年2月期は20年1月まですべての月で既存店売上高が前年を超えている。19年10月の消費増税以降も既存店は前年比5%以上の伸びが続いている。

 春以降に投入した「超特盛」や「ライザップ牛サラダ」などの新製品群に加え、「テイクアウト割引」や増税直後の「牛丼・牛皿10%オフ」といった値引き攻勢が功を奏したといえる。「年間を通してメニューの強化を図れた1年だった」(広報担当者)と自信を取り戻しつつある。

 ファストフード大手の動きを脅威と感じているのが定食チェーンだ。ある定食チェーン関係者は「吉野家のW定食はあのボリュームにしては単価が安い。学生や所得が伸び悩む世代への訴求力は強いだろう。売れ行きを注視したい」と危機感を隠さない。鮫島氏も「同じようにご飯がおかわり自由で、男性客も多い、やよい軒などは影響があるだろう。定食チェーンが客を奪われる可能性はある」と話す。両社の動きは夕食市場にどのような影響を及ぼすのだろうか。

連載「外食ウオーズ」では、日々熾烈な競争が繰り広げられている外食業界の最前線を神田啓晴記者が取材します。連載をフォローして、最新記事をお読みください。