競合が少ない「未開拓地」へ

 しかし、樋口グループリーダーは「オフィス街を回ることは考えていない。住宅街のテークアウト需要を狙う」と語る。モスは単身世帯ではなく、ハンバーガー業態の強みが生かせるファミリー層のまとめ買い需要を狙っているとみられる。

 例えばコロナ禍に入った20年春以降、モスや日本マクドナルドの客単価は上昇し続けた。三密を避けたい客がまとめ買いするニーズが出てきたと考えられる。モスの場合、21年3月期は既存店の客単価がすべての月で前年同月を上回り、22年3月期も21年12月まで4月、5月、12月を除く月で前年同月を上回っている。

野菜は「母店」でカット、商品数は5点に絞り商品単価を高めるなど、モスはキッチンカーで稼ぐ仕組みを模索しているようだ
野菜は「母店」でカット、商品数は5点に絞り商品単価を高めるなど、モスはキッチンカーで稼ぐ仕組みを模索しているようだ

 こうした事情を踏まえると、住宅地を攻めるモスの戦略はキッチンカーの定石とは異なるように見えるが、競合が少ない「未開拓地」ともいえる。持ち帰りに強いというハンバーガーの商品特性もキッチンカーと親和性がある。

 その一方で懸念されるのは、そもそも駅から徒歩圏内の東京都心近郊の住宅地でキッチンカーの需要があるのか、という点だ。モスは当面、キッチンカーを都内で展開するという考えを明らかにしているが、すでに都内には直営、加盟店合わせて国内最多の177の店舗(21年末時点)がある。国内で100店舗超ある都道府県は東京都だけで、駅前・駅近の店舗も多い。「店に行くより価格が高い商品ラインアップ。わざわざキッチンカーに客が集まるのかは疑問」(外食大手関係者)といった声もすでに出ている。

 ペッパーフードサービスやセブン&アイ・フードシステムズもキッチンカーへの参入から1年が経過したが、両社とも配備している車両数は現在まで5台にも満たない。「スケールメリットが出せない以上、利益を大きく出すことは難しい」(セブン&アイ・フードシステムズの広報担当者)といった悩みも聞かれる。注目度の高さに反して、キッチンカーで成功を収めることは容易ではない。

 モスは住宅地のキッチンカー需要というブルーオーシャンを開拓できるのか。オミクロン型の感染拡大で苦悩が続く多くの外食企業がその動向を見守ることになりそうだ。

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