新型コロナウイルスの感染が急拡大したことを受け、1月7日、1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)で再び緊急事態宣言が発令された。「感染拡大の急所」と名指しされた外食業界は、営業時間が午後8時まで、酒類提供が午後7時までという時短営業の要請を受けた。行政は要請に応じた店舗に1日最大6万円の協力金を支払うが、業界からは支給の在り方について不満の声が上がっている。東京都の場合、支給対象が「中小企業・個人事業主が経営する飲食店等」となっており、多数のチェーン店などを傘下に置く大手企業が対象外となったからだ。

 これに対し、「通常通りの営業時間を貫く」とした大手チェーンが現れた。1都3県で居酒屋「博多劇場」など飲食店70店舗を運営する一家ダイニングプロジェクトだ。同社は緊急事態宣言の対象となった3県で大半の店舗を休業する一方、都内ではほとんどの店舗で通常通りの営業を継続している。時短営業の要請に応じない理由とは。武長太郎社長に聞いた。

緊急事態宣言は2度目の発令となりました。昨年4月、1度目の発令時には要請に応じ、休業しています。

武長太郎・一家ダイニングプロジェクト社長(以下、武長氏):4月の感染第1波のときは新型コロナウイルスがどんなものなのか全く未知数でした。従業員の中にも「通勤する途中でも感染するのではないか」といった恐怖があり、顧客からは「洗浄済みの食器からでも感染するのか」といった声も出ました。私も感染経路が全く分からないことへの恐怖を感じていました。

 それでも当時は「この緊急事態宣言の期間をしのげば、コロナ禍を克服できる」。そう考えていました。串カツ田中さんをはじめ、他社も休業に踏み切っていましたから、足並みをそろえて休業に踏み切ったんです。

武長太郎(たけなが・たろう)氏
一家ダイニングプロジェクト代表取締役社長。1977年千葉県生まれ。95年中央大学中退。97年、千葉県市川市に居酒屋「くいどころバー一家(現こだわりもん一家)」を開業。2010年に現在の主力業態となる「屋台屋 博多劇場」を千葉県成田市にオープン。17年12月マザーズ上場、20年3月に東証1部上場。1都3県で居酒屋業態など70店舗を展開する。

今回、都内では時短要請に応じず、深夜帯までの通常営業を続けています。理由を教えてください。

武長氏:協力金の在り方など、行政の対応で、大企業が置き去りにされていると感じたからです。

 実は20年11月末に東京都で時短営業の要請があったときも通常営業を貫きました。当社はディナー営業主体の事業構造です。午後7時以降の売上比率は全体の80%にもなる。フードとアルコールの比率は50:50という典型的な居酒屋業態です。午後8時閉店では商売にならないのです。

 それでも協力金が出るのであれば、時短営業の要請には応じていたでしょう。実際、大企業であっても協力金が支給される地域では、大半の店を休業しています。

 東京都でなぜ通常営業を継続しているのかというと、それは雇用を守るためです。協力金が出ないままで時短営業の要請に従っていては従業員の雇用を守り切れません。緊急事態宣言が発令される直前までは、(東京都でも)大企業含め協力金が支給されると期待していましたが、その対象が中小だけになってしまいました。であれば通常通りの営業をした方がいいという判断です。

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