日経BPは2022年11月に書籍『外食を救うのは誰か』を発行した。新型コロナウイルス禍で訪日観光客やアクティブシニアの消費という追い風がやんだ今こそ、以前から抱えてきた真の課題に正面から向き合わなければ、産業としての成長はない。こうした問題意識を基に、日経ビジネス記者の鷲尾龍一が外食産業の「解剖」に挑んだ書となっている。

 日経ビジネスLIVEでは本書の発行に連動したウェビナーシリーズを開催した。22年12月15日の第1回の演題は「『安売りが外食苦境の根源だ』、ファミレスをつくった男が激白」。講師として登壇したのは、1970年にファミリーレストラン「すかいらーく」1号店を開業した横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』主幹の神山泉氏だ。日本における外食の発展期から成熟期、そして今の停滞期につながる歴史を振り返りつつ、外食産業の課題と展望について語った。

(構成:森脇早絵、アーカイブ動画は最終ページにあります)

鷲尾龍一・日経ビジネス記者(以下、鷲尾)):本日は「『安売りが外食苦境の根源だ』、ファミレスをつくった男が激白」と題して、すかいらーく創業者であり、現在は高倉町珈琲会長の横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』主幹の神山泉氏にご講演いただきます。

 「水商売」といわれていた外食業が産業化されてから約50年、お二人はその歴史を見つめ続けてきました。本日はよろしくお願いします。

横川竟・高倉町珈琲会長(以下、横川氏):よろしくお願いします。

神山泉・『フードビズ』主幹(以下、神山氏):よろしくお願いします。

鷲尾:本日は、3つのテーマに沿って対談していただきます。番組後半では、視聴者の皆様からの質問にお答えしつつ、議論を深めていきます。

 1つ目のテーマは、「なぜ外食産業は苦しんでいるのか。横川氏が『ファミレスの役割は終わった』と語る理由」です。対談の前に、視聴者の皆様に「新型コロナウイルス禍によって外食の頻度が変わったか」について「増えた」「減った」「変わらない」の3択で答えていただきましょう。

 結果が出ました。「減った」という回答が少し多いようですね。「増えた」もわずかにあります。いかがでしょうか。

神山氏:おそらくこの「減った」は、レストランなどで実際に食事をした回数が減ったという意味だと思います。しかしテークアウトやドライブスルー、デリバリーの回数は増えていると思います。実際に、マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキンなどテークアウトが強いところは売り上げや客数が伸びています。

 コロナ禍によって家庭内調理が回復したといわれていますけれども、それはないと思いますね。(テークアウトのような)「家庭内外食」はコロナ禍でも増えているし、これからも増えていくと考えています。

鷲尾:外食企業の経営者は、過度に悲観することはないということでしょうか。

横川氏:夜の飲み会は減ったと思います。ディナーレストランと飲み屋、ファストフードなどと業態を分けて見ていかなければ、一概には言えません。