全1658文字

 焼き肉チェーン「牛角」や居酒屋「土間土間」などを運営するレインズインターナショナル(横浜市)は7日、牛角の一部店舗で実施している焼き肉の食べ放題コースの定期券の販売を急きょ終了した。大手による外食サブスクリプション(定額課金)サービス参入として注目を集めていたが、大きくつまずいてしまった。

牛角は1月7日、「焼肉食べ放題PASS」の販売を終了した

 牛角が今回、販売を終了したのは「焼肉食べ放題PASS」(1万1000円)。通常3480円の牛角コース(90分食べ放題)を1カ月間利用できるサービスで、当初は赤坂、三軒茶屋、花見川の3店舗が対象だった。2019年11月29日のサービス開始直後は落ち着いた販売状況だったが、年が明けた1月初旬からツイッターなどのSNS(交流サイト)を中心に「安すぎる」と話題になり、3回利用すれば元が取れる手軽さもあって、「1月5日前後から急激に販売が伸びた」(牛角広報担当者)という。

 定期券を使う来店客が想定を超える見通しとなったもようで、レイズインターナショナルは7日午後3時に、焼肉食べ放題パスの新規販売を終了した。この間の販売数などは非公開というが、販売終了を知らせるリリースでは「予約で連日お席が埋まりご来店いただけない状態」と理由がつづられている。

 同社によれば、翌月以降のパスの更新も停止する。ただ、販売済みの定期券の利用対象店舗は当初の3店舗から1都3県の48店舗に拡大した。話題になったとたんの販売終了とあって、SNSでは再び注目を集めており、一部では「素晴らしい炎上商法」「いいPRになったのでは」といった声が上がっている。

 外食チェーンのサブスクリプションは2017年ごろから注目を集めるようになったが、導入企業はそれほど多くない。サービスの内容もラーメンのような単品商品の食べ放題やコーヒーなどの飲料の飲み放題が中心だ。

 例えば居酒屋チェーンを展開する三光マーケティングフーズは19年3月、居酒屋「金の蔵」で月額4000円の定額飲み放題サービスをスタートした。こちらは一部FC店を除く約50店舗で利用できるもので、販売数は毎月300前後で推移しているという。アルコール飲料のサブスクリプションであれば、フードの注文が期待できるうえ、「サブスクリプションであれば先に売り上げが見込めることも大きなメリット」と広報担当者は話す。

 「メディアを通じたPR効果が期待できる」と導入のメリットを語るのは、ラーメンチェーン「野郎ラーメン」を運営するフードリヴァンプ(東京・世田谷)。同社は17年11月に月額8600円で1日1杯のラーメンを注文できるサービスを導入した。利用者数は非公開というが「毎月、一定の顧客が利用しており、需要はある」(広報担当者)という。一方で収益性の面では「正直厳しい。13杯で元が取れるとうたっているがそれ以上だと原価割れになるのが実情」と明かす。

ファミリー客狙いの業態では困難

 今回、牛角は何を見誤ったのだろうか。ラーメンのように1人で訪れることが多い業態であれば「回転率は通常客と変わらない」(フードリヴァンプ)ので、原価割れのリスクはあるものの、店舗運営へのリスクはそれほど大きくはない。

 牛角の主なターゲットはファミリーやグループでの来店客だ。しかし、サブスクリプションサービスは個人が購入して1人で利用することが多い。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「個人での購入が多いであろうサブスクの客が殺到すれば4人席も1人で占有されてしまう。それではもうからないとみたのではないか。外食のサブスクで良いのはやはりアルコール。(牛角のケースは)売り方の失敗だろう」と指摘する。

 様々な分野で広がるサブスクだが、外食での導入が容易ではないことが牛角のケースであらわになった。サブスク参入を検討している大手外食チェーンの動向にも影響を与えそうだ。

連載「外食ウオーズ」では、日々熾烈な競争が繰り広げられている外食業界の最前線を神田啓晴記者が取材します。連載をフォローして、最新記事をお読みください。