めちゃくちゃセンスが求められる
編集Y:鷲尾さん、何かコメントはありますか。
鷲尾:これは外食に限らないのでしょうけど、「ここで働いてよかった」「働き続けたい」と思ってもらうには、働いている人の成長実感しかないと思うんですよね。
F:成長実感。
鷲尾:俺は成長できていると。
編集Y:お店で働いていると成長できていると。
F:それは何でもそうですね。
鷲尾:外食の場合は注文を取るとか料理を運ぶとか、基礎的なところがあるじゃないですか。それをある程度、簡素にしたり、スマートフォンで料理を注文するモバイルオーダーにしたりとか。
F:ロボットにするとかね。
鷲尾:そうです。俺はホールスタッフじゃなくてバトラーであると。料理を運んでくるのは俺の後ろに付いてくるロボット。運ぶのはロボットがやるけど、俺はロボットにできないことをする、ぐらいの仕事にしていくのが一つのやり方でしょうね。
本(の第8章)で紹介した塚田農場では、注文はモバイルオーダーでお客さんが自分でやり、それ以外のことを店員がやるようにしています。例えばお客さんが店に入ってきたときにお客さんが持っているものに気付いて、会話の糸口にする、とか。どこの産地でどんな風に調理したかはモバイルオーダーで説明しているので、店員は自身で食べ比べた感想や生産者から聞いて感動したエピソードを話す、とか。こういう「自分にしかできない、プラスアルファをやっている」という感覚が、成長できているという実感につながっていくんじゃないでしょうか。
ただ、人間に何をやらせるかということを経営側も働く側も考えなきゃいけないので、これをやらされたら従業員もかなり大変だと思うんですよね、頭使うから。すごく疲れるとは思います。
編集Y:あの話、面白かったね。定型的な業務を合理化してなくしたら、「何したらいいのか分かりません」という従業員ができてしまったという。
F:グローバルダイニングがやっていた、「客と知り合いになって、顔も名前も覚えて、その縁で」ということ? 放っておいてほしいお客さんも当然いますよね。口説いている最中に口を挟まれたら迷惑です(笑)。
鷲尾:そうですよね(笑)。マニュアル通りにごり押しをしてしまっては付加価値になりません。働く側のやりがいにもつながらないですし。その客の雰囲気とか目的を察して、最適な動きをしなければならない。それって、求められる能力がすごく高いと思うんですよ。
F:それは腰掛け程度の軽い気持ちで働いているバイトの兄ちゃんには。
鷲尾:できない。なかなかできません。
F:あと好き嫌いもある。そういうのが好きなやつとそうじゃないやつもいるわけで。
鷲尾:そうだと思います。外食のホールって、接客センスと努力がめちゃくちゃ求められるはずなんですよ。
F:そうそう。センスはめちゃくちゃ求められますよ。
鷲尾:言い方は悪いですけど、本来、もっとレベルが高いはずなんですよ。働く場所としての格を上げていくべきだと思います。格上げというか、すごく難しい職業なんだよ、だから、給与も安くあっていいはずないよね、と。
F:本当はね。
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