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 ステーキ店「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスが苦境にあえいでいる。1月15日に、SMBC日興証券を割当先として新株予約権を発行。新株予約権をすべて行使すると520万株で、2019年6月末時点の発行済み株式の25%弱にあたる。69億円の資金調達を見込み、うち48億円は膨らんだ借金の返済、残りは運転資金などに充てるという。

 創業社長である一瀬邦夫氏(77歳)と息子で副社長の健作氏など創業家の18年末時点の持ち株比率は24%程度とみられるが、創業家をはじめ既存株主にとっては、希薄化のダメージが避けられない。

ペッパーフードサービスの創業者で社長の一瀬邦夫氏(写真:尾関 裕士)

 13年12月に1号店を出店し、およそ500店にまで急拡大した「いきなり!ステーキ」は、連結売上高の8割を稼ぐ中核事業だ。しかし、郊外で急速に展開した店などが軒並み不振に陥った。18年4月から既存店売上高の前年割れが続いており、19年10月には前年同月比58.6%にまで落ち込んだ。近隣の店同士で客を奪い合う深刻なカニバリゼーション(自社競合)が起き、人材育成が追い付かずオペレーションが乱れ、新規出店による目新しさも薄れたことなどで、絶好調だった業績に急ブレーキがかかった。

本社(東京・墨田)のそばにオープンした店舗を訪れた一瀬邦夫社長(左)。あいにくの雨に、幹部がすかさず傘を差し出す

 19年5月の本誌の取材に対して一瀬社長は、既存店売上高が大きく前年を割り込んでいるのは「これまでが良すぎた」ためと強気の認識を崩さず、当初の計画より出店ペースを下げるとしたものの、それでも19年は100店以上もの出店を断行した。急激な出店や自社競合に業を煮やしたフランチャイズ(FC)店のオーナーからは、出店戦略の見直しを求める声が相次いだ。

 運転資金などの借り入れも膨らんだ。「経営の安定を考えれば、自己資本比率は最低30%は欲しい」(同社の財務担当者)と、急激な事業拡大に対して社内でも危機感が膨らんでいた。しかし、16年末には約30%あった自己資本比率は、18年末には約14%に下がり、19年9月末には約5%と危険水域に達していた。19年8~9月には複数の大手銀行から合計で約41億円を借り入れ、急場をしのいだ。