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 ビール各社が年始に発表した第3のビールの販売数量によると、05年の発売から14年間トップブランドだったキリンビールの「のどごし」が、サントリービールの「金麦」ブランドに首位の座を奪われた。

「本麒麟」の登場で「のどごし」から乗り換えも

 キリンビールの布施孝之社長は、「ユーザーが『麦系』のブランドに流れた結果だ」と語る。「のどごし」は大豆たんぱくを原料としているのに対し、「金麦」など多くの商品は、発泡酒に小麦や大麦のリキュールを加えたもの。よりビールに近い風味を実現できるため、“本物”を求める消費者の支持を集めている。18年に発売し、「まるでビール」との評価を得てヒットを続けているキリンの第3のビール「本麒麟」も麦系で、のどごしから本麒麟への乗り換えが起きた。

 一方のサントリーは、「金麦」ブランドの存在感を引き上げることを最優先にしたマーケティングを展開した。19年2月に発売したコクが強い新商品も「金麦〈ゴールド・ラガー〉」として金麦ブランドの傘の下に置いた。さらに、「金麦」を冠する数量限定商品を相次いで投入し、金麦ブランドの販売数量を稼いだ。

 ある流通関係者は、「『第3のビールで何が何でも首位を取るんだ』という明確な意志を感じた」と言う。サントリービールの西田英一郎社長は、「とにかくうちは『金麦』で押していく。今のうちにブランドを強くしておかなければ市場に残れない」と語気を強める。

 もともと酒税軽減の苦肉の策として生み出された第3のビール。ようやく一大市場を形成した今、再び酒類業界は「官製競争」への対応を余儀なくされている。

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