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 ビール市場の競争条件が大きく変わる1年になる――。ビール大手4社が開いた年頭記者会見で、各社のトップはそんな危機感をあらわにした。

 2020年は、いわゆる「第3のビール」の生き残りをかけた熾烈な競争が本格化しそうだ。第3のビールはビールや発泡酒より酒税が安いビールテイスト飲料として、04年にサッポロビールが「ドラフトワン」を発売。その後各社が新製品を投入し、19年はビール類市場の4割弱(大手4社の販売数量ベース)を占めるまでになった。

「第3のビール」の勝ち残りをかけて競う、キリンビールの布施孝之社長(左)とサントリービールの西田英一郎社長(右)

 しかし10月には、酒税法の改正による税率改定が待ち受ける。ビールと第3のビールとで350ml当たり約50円の差がある税額が、約32円に縮まる。23年10月には約16円差になり、26年10月には税額が一本化される。ビールの方が原価が高いため、それでも店頭価格では20~30円の差が残る。ただ、「安さ」を最大の武器に市場拡大してきた第3のビールは、ビール・発泡酒との税額の差が縮まるにつれて、その存在意義が大きく薄れることになる。

 アルコール度数ではなく、麦芽の比率や含有の有無を基準にビール類の税率を定める日本の酒税。税収確保のために消費量の多いビールを狙い撃ちにする世界でも珍しい税制に、酒類業界は長年振り回されてきた。各社が醸造技術を駆使して編み出した第3のビールは、こうしたいびつな税制の産物だった。

 税率改定は、減税になるビールにとっては市場の縮小にブレーキをかける好機だ。ただ、酒類大手幹部の顔は晴れない。「新ジャンル(第3のビール)を愛飲している人に話を聞くと、大半の人は『本当は“本物のビール”が飲みたいんだ』と言う。そういう意味では税率改定はビール復権のチャンス。だが、ここまで大きな事業になってしまった新ジャンルで、多くの時間と資金を投じて育ててきたブランドを絶やすわけにはいかない」

 「税額が一本化されて、ビールに対する価格優位性が薄れたとき、新ジャンルで存続できるブランドは、せいぜい3つ」と酒類大手幹部はみる。縮み行く市場での生き残りをかけて、既に激しい競争が始まっている。