2022年に開業90周年を迎える松坂屋静岡店(静岡市)の全館リニューアルを決めたJ.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店。リニューアルの目玉に位置付けたのは都市型水族館。なぜ百貨店に水族館なのか。

 「中元や歳暮、行事のために服を買いに来るなど、目的買いの顧客ばかりになっていた」

 25年ぶりの全館リニューアルに踏み切った松坂屋静岡店の落合功男店長は、計画決定の裏にあった問題意識をこう話す。かつては家族連れが「とりあえずデパートに行ってみよう」と考えて休日を過ごすような場所だった百貨店。いつの間にか、目指す売り場に直行して、目的を達成したら帰ってしまうようになっていた。

1932年に開業した松坂屋静岡店。静岡駅北口の目の前に位置する
1932年に開業した松坂屋静岡店。静岡駅北口の目の前に位置する

 本館地上8階、北館地上7階建ての松坂屋静岡店のリニューアルは2期に分けて行う。第1期の対象は全館売り場面積の55%。既に改装作業に着手しており、22年3月から順次オープンする。

 第1期の目玉として本館7階に誘致するのが都市型水族館。「四国水族館」(香川県宇多津町)と「アトア」(神戸市)の実績があるSMBC信託銀行(東京・千代田)が企画や資金調達、発注、運営を担う。大丸松坂屋百貨店が掲げるキーワードは「コト消費として文化を体験できる空間」だ。

7割が「百貨店ほとんど利用せず」

 大型ショッピングモールやアウトレットモールなどの商業施設との競争で、百貨店の存在感は徐々に低下している。マイボイスコム(東京・千代田)が21年3月に10~70代の男女約1万人を対象にしたアンケート調査では、百貨店の利用頻度について「利用したことがない」「ほとんど行かない」「半年に1回くらい」と回答した人の合計が70.8%を占めた。

 松坂屋静岡店も例外ではない。県庁所在地で新幹線も停車する駅の目の前に立地するとはいえ、周囲にある「静岡伊勢丹」などの競合店や他の商業施設との競争は激しい。郊外のショッピングモールにも人を奪われてきた。「これまでのようなショッピング中心の店づくりでは差異化が難しかった」(落合功男店長)

 休みの日にふらっと出かけてもらえるような体験型・滞在型の店舗にするためにどうするか。そこで見つけた答えの一つが水族館だったわけだ。本館5~6階には九州・四国を地盤とするホームセンター大手ナフコが百貨店に初めて出店する。リビングやキッチンなどの生活の場面に合わせた家具の組み合わせを提案する業態を共同で開発していく。

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