衣料品通販のZOZOは12月に初の実店舗をオープンする。この店舗、服や小物を販売しない。来店客に「似合う」スタイルを無料で提案するタッチポイントとして機能する。EC(電子商取引)専業を25年間貫いてきたZOZOが、実店舗を持つ狙いとは。

2022年12月に初の実店舗を開店すると発表したZOZO(中央が澤田宏太郎社長)
2022年12月に初の実店舗を開店すると発表したZOZO(中央が澤田宏太郎社長)

 11月9日、衣料品通販のZOZOが初の実店舗「niaulab(似合うラボ) by ZOZO」をオープンすると発表した。場所は東京・表参道。12月16日の開店予定だ。

 同店舗は販売を目的としない「売らない店」だ。来店客は事前にファッションの好みや悩みをインターネットを通じたアンケートで回答する。来店時は、独自のAI(人工知能)サービスとプロのスタイリストに相談。1人当たり2時間以上かけて似合いのコーディネートを提案する。最後はプロのヘアメークを受け、気に入ったスタイリングで写真撮影をして終了だ。これら一連のサービスはすべて無料となる。

 来店は完全予約制。対話アプリ「LINE(ライン)」の専用アカウントから応募し、当選者が店に訪れる。来客数は1日当たり4~5人を想定しており、年間で1000人程度を見込んでいる。サービスを受けた来店客に商品情報が登録されたQRコードを送り、ZOZOのEC事業サイトへの流入を促す。

 表参道に店舗を構え、プロのスタイリストを採用するなど、似合うラボのサービスを無償提供するにはコストがかかる。ZOZOの澤田宏太郎社長は「似合うラボの立ち上げによる業績への影響は軽微だ」と話すが、このプロジェクトには、どのような意図があるのだろうか。

「ネット世界だけでは完結できない」

 創業から25年間、ZOZOはEC専業でやってきた。人それぞれの「似合う」を追求してきたが、澤田社長は「似合うを知れば知るほど、ネットの世界だけでは完結できないと分かった」と話す。スタイルや顔立ち、趣味など内面性も含めて判断をする必要があると考え、店舗出店を決めたという。「リアルでできることを考えたとき、『似合う』を提供できることが価値だと考えた」(同氏)

 出店の狙いは、データ集めとAIの精度向上だ。価値観や身長、体形、その日の気分などによって「似合う」は異なる。その上で澤田社長は「万人ではなく、例えば『身長が低めの人のうち5割に当てはまるスタイル』といったセオリー(理論)はある。そのセオリーから似合うバリエーションを派生させて、その人の好みに合わせた提案をしていく。かなり複雑怪奇ではあるけど、絶対にセオリー化はできると思う」と自信を見せる。

 だが、似合うをセオリー化するためには、今まで以上に詳細なデータ収集が欠かせない。具体的には「感性のデータ化」だ。重要なのは言葉にすること。店舗では、事前アンケートからAIを活用しながらスタイリストがその人に似合うスタイリングを3つに絞る。最後は特に気に入った1つを選択して撮影をするが、利用者とスタイリストに「何が良いと感じたのか」を具体的に聞くという。

 例えば、「こっちの方がシュッとしているから好き」という評価なら、「シュッと」とは何を指すのかを言語化してもらう。色味や形など、感覚的に気に入った内容を分析するのだ。利用者には多少の負担をかけるが、今まで培ってきたAIの精度をさらに上げるためには、必要な作業だという。

次ページ 似合うラボは多店舗展開も視野に