迷走を続けたセブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店、そごう・西武の売却問題にようやく片が付いた。買い手は米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」。同社は事業や不動産などのバイアウト投資に強みを持つが、不動産の観点では「そごう・西武は魅力に欠ける」という指摘も。むしろ隠れた主役は、フォートレスと組んだ家電量販店大手のヨドバシホールディングス(HD)のようだ。

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旗艦店である西武池袋本店。建物の規模は大きく立地も申し分ないが、土地の所有は一部に限られる
旗艦店である西武池袋本店。建物の規模は大きく立地も申し分ないが、土地の所有は一部に限られる

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は11月11日、百貨店子会社「そごう・西武」の売却先がソフトバンクグループ(SBG)傘下の米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に決まったと発表した。そごう・西武の企業価値を2500億円と算定し、負債額などを調整してフォートレスへの最終的な売却額を決めるとしている。

 フォートレスは同じくSBG傘下の上場REIT(不動産投資信託)であるインヴィンシブル投資法人と連携するなど、日本国内では不動産投資に力を入れている。そのため、そごう・西武OBなどからは「駅前という好立地の不動産が本当の狙いで、百貨店は切り捨てられるのでは」といった警戒の声が聞かれる。しかし、ある国内の証券アナリストは、「切り出せる資産なんてほとんど残っていない」と指摘する。

 セブン&アイHDの有価証券報告書(2022年2月期)によると、そごう・西武が建物と土地の両方で帳簿価格の記載があったのは、西武池袋本店(東京・豊島)、そごう千葉店(千葉市)、そごう大宮店(さいたま市)。しかし土地や建物全体を所有しているわけではない。例えば、西武池袋本店(東京・豊島)は西武鉄道の池袋駅と一体化しており、底地の多くを現在は資本関係がない西武グループが所有している。

 そごう千葉店、そごう大宮店は区画整理事業に参画して出店しているため、土地・建物の権利関係は複雑という。そごう横浜店(横浜市)は再開発ビルに入居しているため、土地の所有権はない。

 つまり、建て替えなどで資産価値を上げようとしても、複雑な地権者との調整に時間がかかる可能性が高い。

 むしろフォートレスと組む家電量販店大手のヨドバシHDが陰の主役と言えるだろう。同社は「そごう・西武の百貨店と連携した新たな店舗の出店をはじめ、(中略)より一層、価値ある店づくりに努めてまいります」とのコメントを発表した。

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 ヨドバシカメラの店舗網とそごう・西武の10の店舗を見比べると、重複の少なさが分かる。両社の大型店が近接して立地しているのは横浜駅前だけ。千葉駅前にも両社の店舗があるが、ヨドバシの店舗は規模が小さい。折しも11月1日にライバルであるビックカメラの大型店舗が開店したこともあり、そごう千葉店に増床移転すれば対抗策になりうる。また、ヨドバシはさいたま新都心駅前に大型店を持つが、商業施設が集積する大宮駅前のそごう大宮店のほうが立地条件はいい。

 そして西武池袋本店はヨドバシ出店の最有力候補だ。駅前にはビックカメラ、ヤマダデンキの旗艦店がひしめくが、西武池袋本店は駅直結である分で有利となる。西武渋谷店(東京・渋谷)もヨドバシが未出店のエリアだ。

池袋駅前には家電量販がひしめく。右のヤマダデンキは以前、三越池袋店だった
池袋駅前には家電量販がひしめく。右のヤマダデンキは以前、三越池袋店だった

 収益力の低い地方店舗は切り捨てられるという見方もあるが、そうとも言い切れない。秋田、福井、広島はいずれもヨドバシが進出していない空白域だからだ。

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