男性下着といえば、「ウエストテープにブランド名が入ったボクサーパンツ」――。この常識はもう古いかもしれない。総レースのボクサーパンツや、ふんどしを現代風にアレンジした下着など、従来とは異なる下着の売れ行きがじわりと広がっているのだ。身に着けるものによって生まれる「自信」や「満足感」などの精神的要素に左右される“見た目”市場に迫る。

ワコールが2021年12月から販売を開始した「レースボクサー」
ワコールが2021年12月から販売を開始した「レースボクサー」

 男性用につくられた総レースのボクサーパンツが売れている。SNS(交流サイト)などで話題になっているワコールの「レースボクサー」(3960円、税込み)。フロント部を除く全面に花柄のレースがあしらわれている。ワコールは販売枚数を公表していないが、2021年12月にオンラインや一部店舗で販売開始したところ、3カ月分の販売目標をわずか10日間でクリア。増産を繰り返しているという。

 ネット上では「着心地がいい」「ぴったりきれいに履けるのに締め付けがなく、気に入った」「再び販売されて速攻買った」などポジティブな意見が目立つ。ワコールメンズインナー商品部の溝口曜課長は「ここまで売れるとは思ってなかった」と話し、想定を上回る売れ行きに驚きを示す。

 購入層は40代を中心に20代~60代までと幅広い。自分のために買う人もいれば、男性へのプレゼント用に購入する女性も少なくないという。購入者の特徴について溝口氏は「ものづくりへのこだわりや、レースの美しさに共感してくれる人が手に取っている印象だ」と話す。

 普段は人目に触れない下着だが、身に着けるものによって生まれる「満足感」や「高揚感」などの精神的要素は、外見的な“見た目“にも影響を及ぼす。そう感じる消費者は意外と多いのかもしれない。

下着の役割に変化

 商品開発の背景には、男性下着の「日用品化」への危惧がある。男性下着はウエストテープにブランド名やロゴが入っているものが代表的で、女性下着に比べてデザインや生地に変化が少なかった。溝口氏は「あまりこだわりなく下着を買っている人が多いと感じる。下着に『気分を高める』という役割をもっと持たせたい」と思い、レースボクサーの開発に踏み込んだ。

 女性下着を販売するワコールでは、男性下着にレースを使うことに社内から抵抗の声はなかったという。ただ、懸念したのは「色物」として見られること。「『男性らしさ』『女性らしさ』にとらわれず、誰でも美しいと感じるつくり方をしている」と溝口氏は強調する。

 溝口氏が特にこだわったのはレースだ。デザインや機能性などを考え、一から開発に挑んだ。レースが初めての人にも違和感なく、手に取りやすいデザインを意識してエレガントな柄を起用。さらに、激しい動きでも体にフィットする伸度、ガサガサして擦れや痛みが生じない肌触り、着用時に腰の部分を引っ張って、破れてしまわないような強度など、女性用途とは異なる課題を意識して開発した。

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