新宿駅西口の再開発のため、小田急百貨店新宿店本館(東京・新宿)が閉店した。新宿西口ハルク(東京・新宿)に移転したが、売り場面積は以前の8割減。アパレルの取り扱いをやめるなど、集客力がある商品カテゴリーに絞り込んだ。一方でEC(電子商取引)との連携や、地下街への食品売り場拡大など、狭い売り場を補おうと懸命だ。業態も売り場も、百貨店という枠組みから溶け出し始めている。

 「小田急百貨店新宿店は、閉店しません。」――。2022年5月、新宿駅周辺や小田急線の車内にこんなポスターが掲示された。新宿駅西口の再開発に伴い、新宿駅に直結する本館の建て替えが決定。10月2日が最終営業日となった。ただ、百貨店自体は10月4日から「別館」だった「新宿西口ハルク」に移転し、営業を続けている。

小田急百貨店新宿店本館(右側の建物)が営業を終了し、小田急百貨店は新宿西口ハルク(左奥の建物)に移転した
小田急百貨店新宿店本館(右側の建物)が営業を終了し、小田急百貨店は新宿西口ハルク(左奥の建物)に移転した

 ハルクは1962~67年まで小田急百貨店の初代本館だったので、出戻ったと言える。しかし売り場面積はこれまでの8割減と大幅に縮小した。地下3階~地上8階までの11フロアのうち、2~6階の5フロア(2階は一部)を家電量販店のビックカメラが占めているからだ。今回、小田急百貨店が売り場を確保できたのは地下2階から地上2階までと7階の、実質5フロアにすぎない。

 そのため、「苦渋の決断」(新宿店長の林幸一取締役)で婦人服などアパレルの取り扱いを断念せざるを得なかった。林氏は「売り場面積が限られ、来店客に満足していただける展開にならない」とその理由を述べたが、関係者は「アパレルの売り上げの勢いが落ちているのも理由」と明かす。ユニクロなどのファストファッション、ゾゾタウンなどのEC、アウトレットなどの勢いが増し、高価格な百貨店の存在感は低下している。同様に、ニトリなどの専門店が強い日用品の取り扱いもやめた。

 一方、残った商品カテゴリーは何か。百貨店の顔である1階には、シャネル、グッチ、カルティエ、サンローランなどの高級ブランドが並ぶ。新型コロナウイルス禍でも売り上げが好調な、オメガ、フランク・ミュラー、グランドセイコーといった時計の取り扱いも拡充した。

 7階にはギフトサロンと外商顧客向けの「お得意様サロン」を配置。百貨店のブランドに高い信頼を寄せる顧客の囲い込みに注力する。

 ただ全てのアイテムを取りそろえるのは難しい。そこでギフト商品の値札にQRコードを表示させ、読み取るとECサイトに誘導する仕組みを取り入れた。新宿店だけでなく、町田店(東京都町田市)、小田急百貨店ふじさわ(神奈川県藤沢市)で取り扱いのある商品を電話やオンラインで注文できるサービスも展開する。「売り場はコンパクトだが、お客様とはデジタルコミュニケーションでスマートに接客していく」(林氏)。外商顧客に対しては、百貨店以外に直営店を構える高級ブランドに外商担当者がアテンドするサービスを始めた。

ギフトコーナーでは電子値札のQRコードを読み取るとECサイトで商品の購入ができる
ギフトコーナーでは電子値札のQRコードを読み取るとECサイトで商品の購入ができる

コスメとデパ地下が同居

 地下1階の大半は化粧品売り場で、以前の8割の規模を確保したという。そしてフロアの一部を和洋菓子売り場に割り当てた。食品とそれ以外のカテゴリーを同じフロアで売るのは珍しく、都内では他に松坂屋上野店(東京・台東)くらいしかない。

 2つを同じフロアに配置した理由について、林氏は「顧客の購入データを見ると、スイーツと化粧品を同時に購入している実態が分かった。買い物の利便性を高めるため、同一フロアでそろえた」と述べる。

化粧品売り場と和洋菓子売り場が向かい合う地下1階。あまり例のない売り場構成だ
化粧品売り場と和洋菓子売り場が向かい合う地下1階。あまり例のない売り場構成だ

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