インターネット上の仮想空間「メタバース」で開かれるイベントに出展する企業が徐々に増えている。今夏に開催した世界最大級のイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」には約60社が参加。新型コロナウイルス禍が長引き、実際の店舗に訪れる来客数が戻らない中、企業はデジタルになじみのある20~30代を新たな客層として取り込もうと試みる。メタバース空間には独特の“作法”もあり、企業もノウハウを蓄積し始めている。

 メタバースは「メタ(超越した)」と「ユニバース(宇宙)」を合わせた造語だ。パソコンと接続したゴーグル型の端末、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着すると、高解像度のコンピューターグラフィックス(CG)でつくられたメタバース空間がレンズを介して目に映る。端末にはセンサーが備わっており、首や身体の向きを変えることで映像も動き、あたかも自分自身がその場にいるような錯覚を楽しめる。

記者も使ってみたが、HMDは約500グラムでさほど重く感じない
記者も使ってみたが、HMDは約500グラムでさほど重く感じない

 このメタバースで操作する「自分」はアバター(分身)と呼ばれ、両手に持ったコントローラーで操る。アバターはユーザーの実際の容姿に似せることも、性別や体形が現実と異なるキャラクターに変えることもできる。仮想空間で「もう1人の自分」を演じることが面白さの一つで、利用者はマイクを使って他のアバターとの交流を楽しむ。やっていること自体は、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などを介したオンライン飲み会と似ている印象がある。

YouTubeでライブ配信された開会式では、HIKKYの社員や関係者らがアバター姿で集まった
YouTubeでライブ配信された開会式では、HIKKYの社員や関係者らがアバター姿で集まった

 こうしたメタバース空間では定期的に”お祭り”が開催される。その一つが2018年創業のスタートアップ、HIKKY(ヒッキー、東京・渋谷)が手がける世界最大級のイベント「バーチャルマーケット(Vket)」だ。同年8月に初めて開催し、以降はほぼ半年ごとのペースで催している。サークルや企業がメタバース上で使えるアバターなどの3次元(3D)データを販売するほか、EC(電子商取引)サイトに遷移して実際の商品の購入もできるのが特徴だ。

出展する企業名に驚きの声

 「4年間でこれだけ楽しくなってきた」「熱意ある企業さんが増えてきた」――。8月13日、YouTube(ユーチューブ)上でライブ配信された「バーチャルマーケット2022 Summer」の開会式では、アバターとなった司会の2人があいさつし、同日から始まった第8回に出展した約60社の名前を順に読み上げた。知名度の高い企業が登場するたびに、コメント欄では驚きの声が上がった。 

 実際、こうしたメタバース空間に新たな商機を見いだし、出展する企業は徐々に増えている。21年12月に開かれた前回(第7回)は、約2週間でのべ約100万人が来場し、過去最多となる約80社が参加した。HIKKY代表取締役CEOの舟越靖氏は「新型コロナウイルスのまん延以降、企業からのメタバース参入についての相談を月数百件受けている」と明かす。

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