モノタロウが新設した「猪名川ディストリビューションセンター」では、棚がこちらのほうに近づいてくる。“足元”を見ると、棚の下に自動搬送車(AGV)が潜り込んでいた
モノタロウが新設した「猪名川ディストリビューションセンター」では、棚がこちらのほうに近づいてくる。“足元”を見ると、棚の下に自動搬送車(AGV)が潜り込んでいた

 棚が群れをなして、近づいてくる。作業員はその到着を待ち構えるだけでよい。人が歩くのではなく、棚が“歩く”。倉庫内の作業の在り方を、根本から変えた物流施設が産声を上げた。

 工具通販大手モノタロウ が、兵庫県猪名川町に新設した「猪名川ディストリビューションセンター(DC)」である。

歩行距離10キロ超が「ゼロ」に

 なぜ、棚が“歩ける”ようになったのか。それは、ロボット掃除機のような形をした自動搬送車(AGV)が、棚の下に潜り込んで動かしているからだ。モノタロウは猪名川DCに日立製作所のAGV「Racrew(ラックル)」を約800台導入することで、歩く作業からの解放を狙った。

 注文が入った商品を探し出し、つかみとるピッキング作業員は、これまで倉庫内を1日平均10キロメートル以上歩いていたという。「作業時間の実に6割を歩行に費やしていたのが、限りなくゼロになる。そこが一番のポイントだ」。モノタロウの鈴木雅哉社長は、そう力を込める。

 モノタロウは製造業や自動車整備、建設工事などの現場で使われる工具などを約1800万アイテム販売する。人呼んで「工具界のアマゾン」。売り場の制約がないネット通販の強みを生かし、年に1度注文が入るかどうかという、極めてニッチな商品も取り扱っているのが特徴だ。

 午後3時までに注文すれば、原則として当日中に出荷し、翌日には客の手元に届く。その利便性が広く知れ渡り、登録会員数は2022年3月末で700万を突破。連結売上高は毎年20%増を続け、22年12月期は2260億円と、初めて2000億円の大台に乗る見通しだ。時価総額は1兆円を超え(22年6月10日時点)、株式市場では名だたる大企業に伍(ご)する評価を受けている。

 急成長を支えているのが、大量の商品を保管する物流施設だ。モノタロウにしかない商品を数多く取りそろえていることが、競争力の源泉となっている。

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