ニトリホールディングス(HD)が家電量販のエディオンへの出資を決めた。狙いの1つは家電の品ぞろえ強化。それだけでなく、エディオンが強みを持つ別の事業を強化する狙いもありそうだ。「家まるごと」を巡ってヤマダHDとの総力戦が始まる。

 家電量販大手のエディオンに10%出資すると4月27日に発表した家具・日用品大手のニトリ。5月13日にエディオンの大株主であるLIXILが保有する8.6%分を102億円で買い取り、残りの1.4%分は市場外の相対取引または市場買い付けで追加取得する。

 2020年にホームセンターの島忠をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化したときとは異なり、友好的な資本業務提携という。ニトリとエディオンの両社はそれぞれの発表資料に、店舗開発に向けた協業や商品の相互交流など、相乗効果の創出に向けた協議・検討項目を5つ挙げた。具体的な内容については「店舗、商品、電子商取引(EC)など分野ごとに分科会を立ち上げ、定期的に協議を開いて決めていく」(エディオン)という。

生活家電を増やしてきたが……

 ニトリが家電量販に触手を伸ばした最大の理由は何か。店舗に行くとそれが見えてくる。

 ここ数年、ニトリは生活家電の取り扱いを拡充してきたが、その大半は価格が安い単機能商品だ。ファミリー層を意識した大型テレビや大型冷蔵庫も取り扱っているものの、中国ハイセンス製だけで種類は限られ、国内大手メーカーの商品は見られない。

 ニトリは家具や日用品ではSPA(製造小売り)としての強みを生かせているが、高機能な家電製品では大手メーカーの人気が依然として根強いため、来店者のニーズを満たせていなかった。エディオンが扱う家電製品のラインアップはそれを補う存在となるだろう。

 ニトリの一部フロアにエディオンが出店するのが正攻法とみられるが、新規出店にはどうしても時間がかかる。短期間で相乗効果を得る手段として実現しそうなのが、エディオンが取り扱う家電商品をニトリの売り場に並べるプランだ。この手法は、東京・二子玉川にある「二子玉川 蔦屋家電」で実績がある。

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